日本の「マックハンバーガー」はタイ、ベトナムより安くなっていた 現地調査でわかった超円安の衝撃

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バンコクの庶民価格より安い

 次の渡航国であるタイの首都バンコクでも、マクドナルドの価格を調べてみた。小説家・沢木耕太郎が自身の旅を記した著書『深夜特急』にも登場したカオサン通り。世界中からバックパッカーが集まる“聖地“として知られている。そんな名所の中心地にあるマクドナルドの店舗に入店。注文方法はハノイと同じタッチパネル式だ。画面をスクロールして「Burger」の商品群を調べると、最安値の「ハンバーガー」は49バーツ、「チーズバーガー」は85バーツ、「ビッグマック」は145バーツだ。それぞれ212円、368円、628円となる。いずれも日本よりかなり高い。というか日本が安すぎるのか。

 ベトナムドン同様、タイバーツに対して日本円は弱くなる一方。2021年9月ごろは1バーツ3.3円ほどだったが、現在は4.3円ほど。1万円を両替すると3年前は2800バーツほどだった。だが、みるみるレートが悪くなり今年5月末に2300バーツを割ると、「ついに来たか……」とタイ在住日本人の間に衝撃が走った。

 タイのマクドナルドについて、バンコク在住の日本人留学生に聞くと「バンコクの巨大ロータリー・戦勝記念塔周辺の店舗は若者向けなので値段が少し安いですよ」という返事。そこでカオサン通りからローカル路線バスに乗って約20分の場所にある同記念塔周辺を調査した。大型商業施設「CENTER ONE」に入店しているマクドナルドの「ハンバーガー」は45バーツ、「チーズバーガー」は75バーツ、「ビッグマック」は135バーツだった。それぞれ194円、325円、585円となり、やはり日本より高い。バンコクの庶民価格よりも日本のマクドナルドの方が安いということが判明した。国や地域によってハンバーガーの素材に違いがあるとしても、けっこうな差だ。

 英経済専門誌「The Economist(エコノミスト)」(電子版)が今年1月25日に、世界55の国と地域のビッグマック指数とビッグマック価格のランキングについて記事を配信している。それによると、ビッグマックが高い国の1位はスイス1207円、2位はノルウェー1056円、3位はウルグアイ1041円、4位はユーロ圏867円、5位はスウェーデン867円だった。日本は45位で、46位ベトナム、47位香港、48位ウクライナと続き、最安値の55位は台湾の353円だった(為替レートは当時)。アメリカは9位で841円。米マクドナルドのジョー・アーリンガー社長は先立って、メニューの平均価格が過去5年間で約40%も値上がりしたと発表している。

 今回はビッグマック指数だけでは分からないマクドナルドの物価比較を現地で行ったことで、深刻な円安の実態が改めて浮き彫りとなった。都内のマクドナルドの店舗に立ち寄ると、欧米やアジアの観光客が大量のハンバーガーやポテトを食べている姿をよく見かける。日本国内のマクドナルドがここまで安いとマック好きの外国人観光客が押し寄せるのも当然だろう。「海外より値段が安いのはありがたいことではないか」という声も聞こえてきそうだが、「ついにベトナムにも抜かれてしまったのか」とため息が出てしまうのも事実なのである。

豊島ハヤト(とよしま・はやと)
早大政経学部卒業後、大手マスコミに就職。取材でアジア、ヨーロッパ、豪州などを駆け巡る。退職後、フリーライターに。専門分野は海外旅行や海外事情のほかエスニックフーズ、ノマドスタイル、海外移住、日本の中国・韓国人社会など多岐にわたる。月刊誌に書評、映画評のほか東京・歌舞伎町を舞台にしたアジア系移民による闇ビジネスのルポルタージュも発表。愛読書は沢木耕太郎『深夜特急』。

デイリー新潮編集部

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