ロシア経済好調の裏に軍需産業 欧州全域で「戦時経済」が進めば、誰も求めていない「軍事衝突」が起こりうる
ロシア経済好調の裏に軍需産業
ロシア経済は相変わらず好調だ。
GDPは4四半期連続でプラス成長している。今年第1四半期の国内総生産(GDP、速報値)は前年に比べて5.4%増加、伸び率も昨年第4四半期と比べて4.9%増加した。
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ロシア経済発展省によれば、第1四半期は製造業が8.8%増えた。中でも機械や化学、自動車などの伸びが目立った。長期化する戦時下で軍需分野の生産が拡大していることが主な要因だ。プーチン大統領も「軍需産業はこの1年半ほど良い結果を出している」と評価している。
国際通貨基金(IMF)も同様の見方だ。5月16日に公表した経済見通しでロシアの今年の成長率を3.2%とした。昨年10月の予測に比べて2.1ポイントの引き上げとなり、2四半期連続の上方修正だ。
ロシアはウクライナに侵攻した2022年、西側諸国が科した経済制裁などの影響でマイナス成長に陥った。だが、その後、政府による武器などの発注増加が需要を押し上げ、経済はV字回復を遂げている。
新たなロシア国防相は経済学者
ロシアでは戦時経済体制への移行が急ピッチで進んでいる。国防関連予算は全体の予算の3分の1に達し、ソ連時代末期の水準に相当する。
政府は民間の軍需企業の強制的な国有化も進めている。検察が汚職といった理由で企業の資産などを大量に没収しており、ウクライナ侵攻以降の差し押さえ額は1兆7000億円に上った(5月29日付日本経済新聞)。
筆者が注目したのは、5期目に入ったプーチン氏が新たな国防相にアンドレイ・ベロウソフ氏(65歳)を起用したことだ。ベロウソフ氏は軍事経験ゼロの経済学者だが、大企業への徴税キャンペーンを率いた実績を買われて抜擢されたと言われている。
ベロウソフ氏は軍民の融合を掲げており、今後、国営の軍産複合体が民間企業をのみ込む形で肥大化する可能性がある。プーチン氏は、ベロウソフ氏がウクライナとの長期戦に耐えうるロシア経済を構築してくれることを期待しているだろう。
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