新外国人「ヘルナンデス」が巨人打線の起爆剤に…日本とつながりの深いメジャーリーガーを思い出した【柴田勲のコラム】

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ヌートバーを思い出す

 甘い球を思い切って振っている。特に第1ストライクを狙っている。ボール球を振って投手を助けるタイプではない。

 打者は甘い球を見逃してはなにも残らない。巨人の打者たちは一番打ちやすい第1ストライクには手を出さず、追い込まれて難しい球を振りにいっていた。

 結果ばかり考えて萎縮して、負の連鎖に陥っていた。そんな中、ヘルナンデスは甘い球を狙った。振らなきゃ事件は起こらない。ハツラツと打席に入っていた。

 途中入団の選手に求められる起爆剤の役割を果たした。メジャーでやるにはパワー不足ということだが、3Aでは走攻守がそろった好選手に入る。スリムな体形で見るからに機敏そうだ。守備も悪くない。

 昨年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で1番打者として活躍したラーズ・ヌートバー外野手を思い出した。

「全力でプレーする姿がすがすがしい。打撃は思い切りがいい。ファーストストライクを積極的に狙っている。でも大振りはしない。コンパクトな打撃を心がけている」

 当時、こんなことを記した。ヘルナンデスとピッタリ重なる。

 ヘルナンデスは伸び伸びとプレーすることが大事だということを示したと思う。

「つなぐ気持ち」が結果に表れた

 1番の丸が好調をキープし、吉川尚輝もいい感じで振れている。あとはやはり岡本和待ちになるかな。狙った球を空振りしている。ファウルにならない。いい材料ではない。

 2日の試合、坂本勇人が1日に続き、腰の張りを訴えて欠場した。7番に秋広優人を急きょ起用してしのいだが、こうなると1番から4番に比べると5番以下はやはり弱い。

 それでも7得点できたのは誰もがつなぐ気持ちで打席に立ったからだろう。DHで出場した大城卓三は本来の打撃ではなかった。立岡宗一郎が頑張ってはいるが、巨人打線は上半身と下半身がアンバランスだ。このへんが少し気がかりだ。

怖いけど楽しみ

 投手陣は相変わらず好調だ。1日は抑えのアルベルト・バルドナードが最後にやられたが、長いシーズンだ。こんなこともある。

 戸郷翔征と山崎伊織は安心して見ていられる。山崎は慎重になるあまり、四球から崩れる可能性もあるが立派に先発の務めを果たしていると思う。戸郷と山崎は二枚看板だ。

 菅野は5連勝と勝ってはいるけど、以前のように真っすぐの威力はない。変化球の切れが利いている。“顔”もある。ベテランの復活は心強い。

 4日からは東京ドームにロッテを迎える。2日は阪神に敗れて12連勝こそ逃したが、チームに勢いがある。

 先発は山崎か。ロッテ3連戦、怖いけど楽しみだ。もちろん、ヘルナンデスには引き続き注目である。(成績などは3日現在)

(※)ドミニカ共和国出身。2011年にロイヤルズと契約。12年からマイナーでプレーし、22年にレンジャーズでメジャーデビューした。メジャー通算14試合、打率1割8分2厘、3打点。昨年は3Aでリーグ最多の165安打を放つ。外野はどこでもOK。185センチ、89キロ、右投げ右打ち。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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