低栄養への落とし穴…「おばけタンパク」とは? 認知症予防に「豚汁」が役立つ理由

ドクター新潮 ライフ

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間食で補うという割り切り

 次に、味付けでできる工夫としては、酸味は他の味覚よりも感じやすいので、ケチャップやソース、マヨネーズで味にアクセントを加えてみるのもいいでしょう。

 また、食べられない時に無理に食べることも、食の楽しみを消失させることにつながりかねませんので、1日3食にこだわらず、間食で補うという割り切りも一つの手です。おやつにおせんべい数枚でもゆで卵1個でも、エネルギーを補う効果は期待できます。

 さらに、食欲には「見た目」も関わってきますので、お皿の数を減らしてみたり、盛り付けを目いっぱいにしないことで、「こんなに食べられない!」と視覚によって食欲が奪われてしまう事態を避けられます。

 そして、食欲を増すためには、やはり何よりもおいしさが重要です。おいしそうだと感じられないものを食べたいとは思わない。これは人間として極めて自然な現象でしょう。

おいしさとは「情報」でもある

 では、私たちはおいしさをどのようにして感じるのでしょうか。味覚によって? もちろん味も大切ですが、それだけではありません。おいしさとは「情報」でもあるのです。

 皆さん、これまでの人生で一番おいしいと感じた食事を思い出してみてください。シンプルな納豆ご飯かもしれませんし、おすしかもしれません。いずれにしても、その食事の味とともに、それを食べた際のシチュエーションなどの情報が加わって、おいしい記憶として残っているのではないでしょうか。

 納豆ご飯なら、湯気が立つご飯の上に納豆をのせた時の見た目や香ばしさ。おすしなら一緒に食べた時のメンバーやネタの彩り等々。そうした情報が加味されて、皆さんにとっての「おいしい食事」となっているはずです。そのおいしい食事は、まさにおいしい記憶を呼び覚まし、食欲をそそってくれるはずです。

 このように、食欲が掻(か)き立てられる「きっかけ食」を把握しておくことで、あまり食べたくない気持ちの時でも、文字通りきっかけ食がきっかけとなって食べられるようになるケースもあります。ちなみに私のきっかけ食は、母の味である真っ赤な色のお赤飯で、母を亡くして食欲がなくなってしまった時、お赤飯が食欲を戻すきっかけとなってくれました。

 こうしてさまざまな工夫によって食べる意欲を維持することが、低栄養から身を守る最良の方法であるわけですが、食欲に従って食べたいものだけを好きなだけ食べればいいという話でもありません。当然ながら、栄養バランスは大切です。

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