低栄養への落とし穴…「おばけタンパク」とは? 認知症予防に「豚汁」が役立つ理由

ドクター新潮 ライフ

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なぜ「正しい食事」をして体重が減少してしまう?

 しかし、「積極的に取る」、「過剰にならないように努める」と言われて、果たして具体的にどうすればいいのか皆さんお分かりになるでしょうか? ややもすると、「とにかくタンパク質をいっぱい摂取して、糖質を取らない」というふうになりかねません。

 実際、「年を取ったら、タンパク質が大事だからご飯は食べなくてもいいんですよね? だから私は卵、納豆、小魚、刺身、豆腐を食べてタンパク質を十分に取り、白米は食べないようにしています」と仰る初老の女性がいました。

 彼女の中では、「魚や大豆=タンパク源=いっぱい食べる」、そして「白米=炭水化物(糖質)=食べない」という理解になっていたようです。しかし、彼女なりに健康的な食生活を送っていたはずなのに、少しずつ体重が減ってしまっているというのです。なぜ、「正しい食事」をしているのに、低栄養の兆候である体重の減少が起きてしまったのでしょうか。

 答えは、せっかく一生懸命に摂取したタンパク質が“おばけタンパク”になっていたからです。

本末転倒の結果

 タンパク質も糖質も五大栄養素であり大事なエネルギー源です。そして、体は生命活動を維持していくにあたり、何をおいてもエネルギー源の確保を優先します。そのため、糖質のエネルギーが不足していれば、まずは脂質をエネルギー源として活用し、それでも足りなければタンパク質がエネルギー源として利用されます。

 先の初老の女性の場合、ご飯(糖質)を全く食べていなかったのでエネルギー不足に陥り、頑張って取っていたタンパク質が、筋肉などの構成成分として利用される前にエネルギーとして利用されていたのです。つまり、タンパク質を摂取していた本来の目的は筋肉や骨格を衰えさせないことであったはずなのに、糖質不足のせいでその目的のためには全く使われていなかった。タンパク質がタンパク質の用をなしていなかった。これを私は“おばけタンパク”と呼んでいます。

 このように、(1)も(2)も正しいのに、両方を過度に徹底するあまり本末転倒の結果が生じてしまいかねないのです。

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