低栄養への落とし穴…「おばけタンパク」とは? 認知症予防に「豚汁」が役立つ理由
タンパク質を積極的に摂取して、筋力低下の予防に努める。近年、中高年にとっての“常識”となっているが、そこには落とし穴があった。せっかく摂取したタンパク質が実は無駄になっていることが……。専門家が、恐るべき“おばけタンパク”とその対策を解説。【川口美喜子/札幌保健医療大学大学院教授】
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中高年が食生活において最も気を付けなければならないこととは何でしょうか?
(1)筋肉の源となるタンパク質をたくさん取る。
(2)老化の原因の一つである糖化を防ぐために糖質の摂取を控える。
正解は、「どちらも正しい。しかし同時に、それはリスクを伴っている」です。
〈と、謎掛けのような問答を紹介するのは、管理栄養士で、札幌保健医療大学大学院教授と大妻女子大学特任教授を兼任する川口美喜子氏だ。
島根大学医学部附属病院「栄養治療室」での勤務経験があり、「病と食」「健康と食」についての研究とアドバイスを続けてきた川口教授は、今年1月、『低栄養を解決する長生き食べ方 100年栄養』(サンマーク出版)を出版。文字通り、人生100年時代における食のあり方を問いかけた。
栄養学の専門家である川口教授が「食の哲学」を続ける。〉
低栄養の「負のスパイラル」
中高年にとって何よりも怖いのは低栄養になってしまうことです。食欲が減退し、食事の量が減って、筋肉が衰えてサルコペニア(加齢に伴う筋肉減少症)になり、運動量が落ちてフレイル(要介護手前の老衰)に陥る……。
低栄養にはこの負のスパイラルを招いてしまう恐れがあります。代謝機能などが低下する中高年にとって、栄養摂取の重要性は若い人以上に増します。従って、とにかく低栄養になるのを避けるために、食事によって十分な栄養を摂取する必要があるわけです。では、低栄養にならないようにするには、どのような食事を心がければいいのでしょうか。
ここで話を冒頭の問いに戻します。一般的に、中高年は(1)および(2)に、ともに注意を払わなければならないとされています。繰り返しになりますが、(1)も(2)もそれぞれは正しい。中高年にとって筋肉量の維持は欠かせないので、タンパク質を積極的に取るに越したことはない。また、肥満の元であり、糖化を招く糖質の摂取は過剰にならないように努めたいところでもあります。
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