銅の値上がりで5円玉、10円玉がプラスチックに? 「過去には100円玉が大量に国外に持ち出されて枯渇したことも」

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 5円玉と10円玉がピンチに陥っている。5円玉は銅を60~70%含んだ黄銅。10円玉は銅が95%で、残りはスズと亜鉛の合金である。ところが、主に銅の値上がりで原材料費が額面に迫っているのだ。

 5月17日付の〈日経速報ニュース〉によると、5円玉は額面の94%、10円玉では8割近くまでコストが上昇しているという。実際、金属大手「JX金属」が発表する銅の価格(建値)は9年前の約2倍である。背景にあるのは、世界的なカーボンニュートラルの波だ。

「再生可能エネルギーとして期待されている洋上風力発電は、海底の送電ケーブルに大量の銅を使用するとみられています。また、普及が見込まれているEVや、その給電設備にも銅が必要になってくる。値上がりの背景にはこうした実需があると分析できます」(日本銅センターの幹部)

100円硬貨が国外に持ち出され、枯渇したことが

 材料の値段が硬貨の額面を上回ると、何が起きるのか。過去には鋳つぶして売却された実例がある。

「硬貨を溶かしたり傷つけたりすると処罰されますが、外国に持ち出して精錬するのは、国外犯規定がないためこの限りではない。1980年代に米テキサス州の石油富豪が銀を買い占めて価格が8倍以上に暴騰したことがありますが、注目されたのが銀の含有量が60%もある日本の“稲穂100円硬貨”。当時、大量の同硬貨が国外に持ち出され、流通量が枯渇したことがありました」(経済部デスク)

 大蔵省(現財務省)は、こうした銀不足を見越して、60年代後半から100円玉を白銅に切り替えている。もし、銅などの材料費が額面を超えてしまったら、別の材料で新しい5円玉、10円玉が発行されるのだろうか。

硬貨に樹脂を使用するべき?

 財務省に聞いてみると、

「貨幣の製造には、材料費以外のさまざまな要素があります。また、その材料の変更には、市中におけるATMや自動販売機などの金銭機器への影響も踏まえる必要があります」(広報室)

 インフィニティのチーフエコノミスト・田代秀敏氏が言うのだ。

「紙幣ではありますが、すでにイギリスと香港ではプラスチック製の通貨が使われています。偽造を防止できるなら、いずれ硬貨にも樹脂を使うことを検討するべきなのかもしれません」

 世の中はとうにプラスチックマネー(カード)が主流だ。コインにも、その時代がやって来るのだろうか。

週刊新潮 2024年5月30日号掲載

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