“なまはげの聖地”を走る「JR男鹿線」で“無賃乗車”横行疑惑 知られざる不正の温床とは
「男鹿線において、無賃乗車は行われていないという認識」
こうした問題を、JR東日本はどこまで把握しているのか。デイリー新潮編集部では、JR東日本秋田支社の広報担当者に電話で話を聞いた。
――男鹿線で無賃乗車が相次いでいるとの情報を耳にしたが、どこまで実態を把握しているのか。
広報:男鹿線において、無賃乗車は行われていないという認識です。基本的に所定の乗車券をお買い求めの上、もしくは定期券をご利用の上、乗車いただいているという認識です。
――現在のようなワンマン運行になってから、無人駅から無人駅の利用については、いくらでも無賃乗車ができる環境にあると思う。無賃乗車を防ぐための対策は行っているのか。
広報:無賃乗車を防ぐ対策は行っていない。ただ、この仕組みを導入してからは、無人駅に運賃箱を設置していますが、この運賃箱自体が盗まれないように、監視カメラを設置しています。
――防犯カメラで、無賃乗車をしている人を発見した場合、その人に注意するといったことはやっていないのか。
広報:Suicaを持っていれば、Suicaをタッチする機械にタッチしてもらえればいいのだが、磁気式の定期券であれば、無人駅であれば素通りでも問題はない。運賃箱に何もせず、スイカの機械にもタッチしなかったといって、それで無賃乗車と断定できるわけではありません。
――現在のワンマン運転の体制になったのはいつからなのか。
広報:2021年の3月のダイヤ改正から。それ以前は車掌が乗車し、乗車券の販売や乗車券の受け取りを行っていました。なぜワンマン運行になったのかはすぐにお話しできる情報がありません。
今こそナマハゲの出番だ
なお、広報担当者は「運賃の支払い方法などについては、ホームページやポスターなどで周知している」と語りつつ、「そもそも、改札のない無人駅の利用状況は把握していない」とも述べた。こうした状況だから無賃乗車がなくならない、と言われても仕方なかろう。無論、それは男鹿線に限ったことではない。他の地域のローカル線でもごくごく普通にみられるし、既に述べたように、筆者も目撃したことがあるのだ。
しかし、JR側も真剣に取り締まってこなかったのも事実だ。そのような姿勢が住民のモラル崩壊を招いているのではないか。さらに、数百円であっても、ローカル線の売り上げのためには大切なはずだ。料金を払わずに鉄道を利用する、そんなモラルのない住民が鉄道の廃線を招いているのではないか。
無賃乗車の横行を指摘したA氏は現役時代、しっかり運賃を払って利用している乗客に申し訳ない気持ちでいっぱいだったと話す。
「車内巡回をすると決まった金額の小銭を握りしめて待っていてくれるお客さまにお会いしますし、“この前払えなかったから”と言って、わざわざ有人駅に支払いに来るお客さまもいます。こういった、きちんと支払いを行って乗車しているお客さまには……申し訳ないですよね」
ところで、男鹿は「悪い子はいねが~」と雄叫びをあげて、家々を回る伝統行事「ナマハゲ」で有名な地域だ。深刻な問題である。不正乗車をする輩は、今こそナマハゲに厳しく叱ってもらう必要がありそうだ。
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