いまや出会いの主流派、「マッチングアプリ」が市民権を獲得した納得の理由…ポイントは“結婚相談所”との大きな違い

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本音を書けない可能性も

 某大手結婚相談所を使った私の大学時代の友人は、「自分を選んでくれるような女性がいるのであれば高望みはしない」と考え、藁をもつかむ思いで35歳の時に結婚相談所に駆け込んだ。大学時代から卒業後も恋人がいたことはない男性である。すると、すぐに2歳年下の女性から興味を持たれ、これまたあれよあれよという間に結婚をしてしまった。

 我々友人は彼女に「こんなヤツの何が良かったんですか?」と失礼な質問をしたら彼女は憤慨。「こんないい人が残ってるなんて思ってなかったですよ!」と言ったのである。確かに彼は一部上場企業勤務で背も大きく、学歴も高いし、何よりもそれまでモテた経験がないだけに卑屈で自信がなく、ついにできた婚約者にはやさしい。彼女は美人で高年収だったのだが、同じように自分に自信がなかった。こうした「高スペックの低自信同士」という二人の特徴が功を奏した。互いに謙虚だったがため、相手に対して過度に求めなかったのである。

 そうした意味で結婚相談所も効果はあるが、とはいっても第三者が間に入ってしまうため、相手に求めるものについて本音を書けないかもしれない。今回、愛媛に嫁ぐ彼女にしても「パチンコが好き」と言ったら、だらしないギャンブル狂だと思われ、紹介を躊躇されそうだから「釣り」だけを趣味にしたかもしれない。ワクチンを打ってない相手、と言ったら「公衆衛生の敵」と思われるかもしれない、とその点を記載しないかもしれない。

出会いはマッチングアプリと堂々と言える時代も

 そうした忖度が、人間を介すると発生してしまうのだ。その点、マッチングアプリだったらその情報を知るのは当の相手のみ。本音を書きまくれたからこそ、これだけ早く結婚相手が見つかったのかもしれない。

 こうした例を聞くようになっていることもあってか、マッチングアプリにかつて漂っていた怪しさやいかがわしさは減っているのではなかろうかと感じる。そうしたことがあり、興味を持つ人も増えているが、某著名人の知人はこの状況に地団太を踏んでいる。離婚をしたばかりでまだ女性と遊びたい時期だし、いずれは結婚したいと考えているため、マッチングアプリを使いたいと考えた。しかし、使えない。

「オレもマッチングアプリやりたいんですよ! だって遊ぶ相手にしても、将来的に本命になる女性だってマッチングアプリの精度が高まったから見つかるかもしれないですよね。そう考えると、『有名で羨ましいですね』なんて言われることもありますが、有名になってもいいことなんてありませんよ! だって、匿名掲示板とかSNSに悪口書かれちゃうじゃないですか。性癖も含めてバラすような人がいる。でも、オレもマッチングアプリやりてぇ~」

 ここまで魅力を感じる人もいるのである。そして、過去には合コンで出会った夫婦は「友達の紹介」と結婚式ではオブラートに包んだが、もうそろそろ「マッチングアプリで出会いました」と堂々と言える時代になるのでは。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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