「中国株には投資しないの?」と問われた“投資の神様”バフェット氏の答えは 証券アナリストが現地で見たバークシャー「4万人株主総会」の注目ポイント

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会場で起きた2つの拍手の意味

 総会の中では、ここ最近バークシャーが日本株への投資を行ったことから、中国やインドの投資家が「バークシャーは中国やインド株式への投資はしないのか」と質問する場面もありました。

 面白かったのは、香港の投資家が「中国株への投資はいつ行うのか」と質問した際に、会場の一部から拍手が起きたことです。どうやら、拍手は中国から来た株主たちによるものだったようです。

 バフェットさんの答えは、

「ひょっとすると、将来そういうこともあるかもしれない。それは自分の時代のことではなく、それより先の時代に起こることだろう」

 というものでした。

 バフェットさんの日本株への投資は大きな成功体験です。ただ、米国以外にも魅力的な投資の対象があるのは事実ではあるものの、問題はバークシャーが米国外で投資を行う上でなんらかの優位性があるのか、という点だとも語りました。

 彼はアメリカに投資することの長所も短所も理解しているが、米国外についてはアメリカと同じようには分からないと言います。バークシャーは世界のGDPの2割以上を占めるアメリカで事業を行っており、これからもアメリカ志向の会社であり続けると答えたのです。

 そうすると、今度は先ほどよりもいっそう大きな拍手が湧き起こりました。やはりアメリカ人たちは、バークシャーには永遠にアメリカ志向のまま、国内企業に投資し続けていて欲しいと考えているようです。

ジョークで締めくくられた総会

 ちなみに、バークシャーが今後も日本株への投資を増やすかというと、私は必ずしもそうではないだろうと見ています。

 なぜなら日本の商社は、バークシャー・ハザウェイという会社の事業形態が近いことがあり、投資がしやすかったという特殊な事情があったからです。それに、バークシャーの日本の商社株への投資が明らかになった時は、まだ日本株市場全体のバリュエーションも割安でした。

 今は日経平均が大幅に上昇しており、当時の割安感はなくなっています。

 バフェットさんは同社が「アメリカ志向」であると発言した際、

「次に大きな投資をする場合、それはアメリカ国内である可能性が極めて高い」

 とも話していました。それも、バークシャーのフォーカスはやはり米国株に向いているのだと感じた理由の1つです。

 実際、5月半ばに確認されたバークシャーの新しい大型投資案件は、アメリカ大手損害保険会社「チャブ」への70億ドルの投資でした。保険はバークシャーが50年以上行ってきた事業であり、十分に熟知したビジネスでもあります。

 そうして、朝8時45分に始まった総会は、午後3時に終了しました。

 バフェットさんは、非常に個性的なユーモアセンスのある方で、真面目な話の最中でも数分に1回はジョークが飛び出しますが、それも彼の魅力です。私を含め、多くのファンがいるのも頷けます。

 今年94歳の誕生日を迎えるバフェットさんの総会での最後の言葉もまた、印象的でした。

「皆さん、今年も来てくれて本当にありがとう。皆さんが来年も来てくれることを願うだけでなく、自分も来年またここに来ることができればいいなと思っています」

 彼の独特なジョークを皆で笑いながら、6時間に及ぶ総会は今年も無事に幕をおろしたのです。

 もちろん、最後もスタンディングオベーションの中で終わったことは言うまでもありません。

岡元兵八郎
マネックス証券の専門役員。専門である外国株のチーフ・外国株コンサルタントのほか、マネックス・ユニバーシティ投資教育機関のシニアフェローも務める。元Citigroup/米ソロモンブラザーズ証券のマネージング・ディレクター。外国株に30年以上携わるプロフェッショナルで、関わった海外の株式市場は世界54カ国を数える。海外訪問国は80カ国を超える。米国株はもちろんのこと、新興国の株式事情にも精通している。ニックネームは「ハッチ」。Xアカウント名 @heihachiro888

デイリー新潮編集部

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