資金力はバイデンが2倍…トランプが克服できない二つの弱点 民主党の“切り札”とは

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「文化戦争」

 文化的な面でも、前任者の政策を否定したがるトランプ氏は修正を図るはずだ。行き過ぎた感が強い、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)の見直しが端的な例だ。リベラル勢力がバラまいた“ポリコレ文化”は、世界中に不思議な現象をもたらした。LGBTQ+(性的少数者)への過剰な配慮により、女性のスポーツ大会に体は男性ながら性自認は女性という人物が出場して勝利する例が後を絶たない。こうした不条理や不公平が、いわゆるポリコレを大義名分にしてまかり通っているのだ。

 これらの現象に関して、トランプ氏や共和党は「常識」(コモンセンス)の重要性を強調して対抗している。要は“マイノリティー擁護の顔をしたポリコレのゴリ押し”を、ごく一般の感覚である社会常識で押し返そうという取り組みである。こうしたリベラル勢力のポリコレと保守勢力の常識による社会的な対立は「文化戦争」と呼ばれている。

 政治の現場でトリプルレッドが形成された場合、社会の振り子は大きく「常識」側に戻ることになるだろう。のみならず、アメリカ社会の政治的な変化は、欧州の政治・社会にもダイレクトに影響を及ぼす。

 世界的なポリコレの中心地はEUだ。なぜならその推進役を欧州委員会が担っているからである。ところが、EU各国の保守派は、欧州委員会によるポリコレの押し付けにウンザリしている。環境問題や性差是正、人権問題、移民受け入れなどの過度な主張にへきえきしているのだ。

“ポリコレ疲れ”は日本にも波及する?

 EUの政治情勢に地殻変動が起これば、世界政治の流れは変わっていく。当然、欧米に“ポリコレ疲れ”がまん延すれば、その影響は日本にも波及するとみられる。従来のリベラル系メディア、弁護士、市民団体といった“ポリコレ勢力”への懐疑的な意識は、SNSで急速に強まっていくだろう。そうなれば、SDGsなどのキラキラした大義名分を掲げた社会的取り組みも後退を余儀なくされる。

 そんな事態を招きかねないトランプ政権が誕生した場合、日本外交にはどんな影響をもたらすのか。私は何より「巻き込まれるリスク」を回避する必要に迫られると考えている。トランプ政権は対中抑止の関係から、わが国に在日米軍撤退をチラつかせながら、思いやり予算の増額を強要するといった無茶な要求をしてくるとは思えない。が、それでも潜在的なリスクはくすぶり続ける。

 安倍晋三元首相は、自身が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」という明確なビジョンで、トランプ前政権の外交方針をうまく誘導していた。ところが、安倍氏が死去した後、日本には安倍氏と同じように大統領と気脈を通じて“トランプ転がし”をできる政治家は見当たらず、心もとない。

 日本が巻き込まれそうな例を一つ挙げるならば、アメリカとメキシコの急速な関係悪化である。

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