資金力はバイデンが2倍…トランプが克服できない二つの弱点 民主党の“切り札”とは

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越えるべき数々のハードル

 ただし、この場合、民主党は急ごしらえの大統領・副大統領候補者での戦いを余儀なくされる。言うまでもなく、そうなった時の最有力大統領候補者はカマラ・ハリス副大統領だ。が、彼女はバイデン氏より人気が乏しいことで知られる。民主党が彼女を大統領選挙における候補者に据えたなら、よりカリスマ性に富んだ有力な副大統領候補者を用意する必要が出てくる。

 例えば、オバマ元大統領夫人のミシェル・オバマ氏、イリノイ州のJ・B・プリツカー知事、ニューメキシコ州のミシェル・ルーハン・グリシャム知事らが考えられる。それでもトランプ氏に勝てそうにないなら、無所属での出馬を表明している弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏を取り込む手もある。彼の支持層には陰謀論者が少なくない。つまりはトランプ支持者と支持層が重なっているワケで、彼がトランプ氏の支持者を切り崩す可能性は捨て切れない。

 以上のように、トランプ氏が大統領に返り咲くにはまだまだ越えるべきハードルが残されている。とはいえ、大統領選と同時に行われる上院議員選挙は、共和党による多数派獲得がほぼ確定している。よって、仮にバイデン氏や他の民主党候補者が大統領選に勝利できたとしても、政権はいきなりレームダックに陥り、まともな仕事はできないだろう。

 それは、大前提として超大国・アメリカの大統領が持つ権限はさほど強大ではないからだ。アメリカでは連邦議会が予算や法律の制定権を有しており、大統領は単に拒否権を持つに過ぎない。しかも現状、上院は民主党が多数だが、下院は共和党が多い。こうした“ねじれ現象”は、大統領の政策遂行を大きく妨げることになっている。

トリプルレッド

 さて、ここで「もしトラ」が現実化してトランプ氏が大統領に返り咲き、さらに共和党が上院と下院で多数派を占める“トリプルレッド”が生じた際に何が起きるのかを予想したい。

 この場合、米国経済は極めてポジティブな状況になる。バイデン政権が制限してきた連邦国有地のシェールガスや、シェールオイルの採掘が大幅に解禁されるだけでなく、連邦政府が量産してきた不毛な規制が次々と撤廃されるからだ。

 さらには、いわゆる“トランプ減税”も強化される形で復活し、米国経済はエンジンを吹かすことになるだろう。米国経済の好調が続けば日本をはじめ、世界経済にも前向きな影響を与える。日経平均株価にも追い風となり、5万円の大台に乗るのも夢ではない。

 ただし、トランプ政権が志向する経済政策には幾つか問題がある。一つがインフレ抑制には不向きであることで、具体的にはトランプ氏が公言する高率の関税が実行された場合、アメリカの物価は確実に上昇する。さらに、不法移民の追放だけでなく、外国人労働者が対象の合法的なビザの発給制限強化を行えば、国内産業が負担する労働コストも高止まりするだろう。

 となると、FRB(連邦準備制度理事会)の政策判断は非常に困難な状況に置かれる。現在も後ずれが予想されている利下げ時期がより遠のき、高金利による悪影響が徐々に米国経済をむしばみ始めることが懸念される。バイデン政権とFRBが残したインフレのツケを、トランプ政権が取らされることになり得る。

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