資金力はバイデンが2倍…トランプが克服できない二つの弱点 民主党の“切り札”とは

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生命線はカネ次第

 自身を支える副大統領の人選に加えて、トランプ氏がバイデン氏に勝利するために乗り越えなくてはならないもう一つの条件が資金調達だ。民主党はウォール街の金融資本家、政府資金に巣くう業界団体(インフラなど)、労働組合(特に公務員系)、環境左派運動家、ハリウッド界隈の意識高い系の業界人、小口のネット献金などを中心に、巨額資金の調達が可能だ。

 意外かもしれないが、近年、共和党は大統領選挙において民主党の集金力に対抗できていない。トランプ氏はこの状況を逆転する秘策として、今年3月末に自らが立ち上げに関わったSNS「Truth Social」を運営する企業をナスダックに上場させ、純資産を大きく増やした。実に事業家らしい資金調達法である。

 しかし、この株式には半年間のロックアップ期間が設けられており、その間は株式を売却することも担保にして借り入れを行うこともできない。つまり、トランプ陣営はロックアップが解除されるまでは別の方法で資金を手に入れる必要があるわけで、その方法を見つけ出せるか否か、トランプ氏の生命線はカネ次第という状況にある。

民主党の切り札

 さて、首尾良くトランプ氏が上述の二つの条件をクリアした場合、最後のハードルとなるのは民主党の“大ばくち”を乗り越えることだ。現状では前回選挙と同様、バイデン陣営はトランプ陣営に資金力で勝っている。

 3月末の時点で、バイデン大統領と民主党の手元資金は1億9200万ドルと潤沢なのに対し、トランプ氏と共和党は9310万ドルに過ぎず、およそ2倍もの差がついている。バイデン陣営のとあるスタッフは、私に「選挙キャンペーンは長期にわたるから、われわれが勝利する可能性は十分ある」との姿勢を崩さない。

 ただ、トランプ氏が資金不足を解消できた場合、バイデン氏の強みはほぼ失われてしまう。そうなると、民主党には大統領候補者をバイデン氏から別の人物に差し替える可能性が出てくる。少なくとも友好国の首脳の名前を呼び間違えてしまう老人ではなく、大統領候補者による討論会における議論を大過なくしのげる人物を充てることになるだろう。そうなれば民主党にとって大きなプラス材料となり得る。

 民主党の正副大統領候補者は、共和党よりひと月遅れた8月の党大会までに決めなければならない。そこで民主党は、ギリギリのタイミングまでトランプ陣営の出方を見据え、その上で候補者を差し替えるという切り札を出す余裕がある。

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