資金力はバイデンが2倍…トランプが克服できない二つの弱点 民主党の“切り札”とは
世界中の国や地域が注視する米国大統領選挙がこの秋に迫っている。民主党はバイデン大統領の再選を、共和党はトランプ前大統領の復権を目指す。気鋭の国際情勢アナリストが、「もしトラ」「ほぼトラ」と報じられる超大国のリーダー選びを精緻な分析で読み解く。
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今年の11月に予定されているアメリカ大統領選挙まで、半年を切った。日本では「もしトラ」「ほぼトラ」と、早くもトランプ氏の勝利を想定した報道が先行している。
実際には、競馬で例えれば“第2コーナーを回った”に過ぎない。いまの段階では、共和党・民主党のいずれの候補が勝利するかを予測することは時期尚早だ。そこで今回は、6カ月にわたって行われる“世界一の超大国のリーダー”を選ぶ選挙の見所を紹介しつつ、新大統領の誕生で世界がどう変わるのかを分析したい。
陸上競技で言えば、アメリカ大統領選挙は短距離走ではなくマラソンだ。現状は勝敗を左右する接戦州で“逃げ馬”のトランプ氏が頭一つ抜けた状態にあるが、このまま逃げ切りが確定するほど甘くはない。トランプ氏がバイデン氏の支持率を上回っている理由は、トランプ氏が4年前よりタフな候補になったからではないのだ。
弱点は資金力
トランプ氏はアイオワ州を皮切りに大半の地域で、共和党内の候補者を選出する予備選挙で圧勝したように見えた。が、自身の弱点はまるで克服できていない。周知のように、トランプ氏は田舎では強固な支持層を抱えているものの、都市部や郊外における無党派層の支持獲得は決して芳しくない。
しかも、各地の大学が立地する学園都市(高学歴の住民が多い)では、他の候補の後塵を拝する姿も見られた。端的に言えば、2020年の大統領選の際に接戦州で敗北した時と比して、支持層には何ら拡がりが見られないのだ。
もう一つの弱点は資金力だ。バイデン陣営は、3月末の時点でトランプ陣営のおよそ2倍もの資金を集めている。2020年大統領選挙当時、トランプ陣営は資金力に勝るバイデン陣営との戦いの後半において資金面でのガス欠を起こした。結果、すべての接戦選挙区で十分な宣伝戦を行えず、必要な数のスタッフが投入できなかった。
加えて今回の大統領選挙では、トランプオーガニゼーションの企業資産水増しによる不正利益取得問題をはじめとする無数の訴訟が提起された。トランプ氏には、これらに関する巨額の裁判費用の支払いという兵糧攻めが行われている。
トランプ氏がバイデン氏に対して優位に立てている理由は、バイデン陣営が本選に向けた本格的な選挙戦を始めていなかったからだ。もちろん、バイデン氏が高齢でもうろくしていることもトランプ氏優勢の一つの要因だが、民主党が大統領選挙本選に本腰を入れ始めると現在の支持率の差は縮まるとみられる。従ってトランプ陣営は、“大統領選挙マラソン”を勝ち抜くために幾つかの条件をクリアしなくてはならない。最初に大切なのは「副大統領候補者」選びだ。
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