「恭サマに嫉妬していた」「次があるかは舘さん次第」 舘ひろし×柴田恭兵 「帰ってきた あぶない刑事」を語りつくす

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「この人となら、もっと楽しいことができる」

 もう細かいことは忘れちゃったけど、当時の恭サマはそれまで僕が共演してきた俳優さんと全く違う芝居の仕方だったので、戸惑ったんだと思うんです。それで、どうしていいか分からなくなって、一回ゆっくり話そうとなった。そこでは張り詰めた雰囲気になったのかもしれない。でも、後から振り返ると僕が子供だった。若かったんですね。自分の型にはまっていたというのか。恭サマの演技でよかったんですよ。38年間も続いたんだから。

柴田 僕としては、台本通りではなく、もっと「遊び」をいっぱい入れたいと思っていて、それを本番でやってみたのです。でも、舘さんは、きっちり台本通り。おまけに石原プロの俳優は3行以上の長いセリフを言ってはダメみたいな空気があって(笑)。

 俳優同士、率直に意見を言い合うことは(ドラマの撮影現場では)あまりないんです。でも、僕はその時、むしろ「この人となら、もっと楽しいことができる」と思えた。舘さんとなら、すごいことができるなと感じたんですね。そこで話し合った結果、長い説明のセリフなどは僕が言うことにしました。また、一緒に走ると、ちょっと僕の方が足が速いから、すぐ二手に分かれようということも決めた。実際、ドラマでは二人で並んで走るシーンがほとんどないんですよ。

 もちろん、舘さんはすごくワイルドでカッコいい。その一方でチャーミングなところがあると感じていました。それを引きずり出してみたかった。例えば、アドリブが求められるところで戸惑っている様子もチャーミングでいいなと思ったんです。そうしたら、ベンガルさんや浅野温子さん、仲村トオルくんまで舘さんをいじり始めた。本番中、舘さんもしかめっ面ができなくなって、背中向けて笑っちゃったりしてね。

「恭サマに嫉妬していた」

 刑事ドラマはこういうものだって僕が思い込んでいるところがありました。だからこそ日テレは新しいものを作ろうとしていたんですが、最初はついていけなかった。それと同時に、恭サマの柔軟な芝居に嫉妬していたんですね。しばらくしてからそれに気が付いた。僕はこういうふうにやりたかったんじゃないか。彼の芝居に憧れていたんだと分かった。それからは気楽に演じることができるようになったんです。

 最近、フィルムコンサートがあって、久しぶりにテレビ版の「あぶない刑事」をダイジェストで見ました。改めて思ったんですけど、やっぱり、あのドラマの独特のリズムは恭サマが作っている。ユージの一挙手一投足が「あぶない刑事」を体現しているんです。

 今思うのは、お互いの考えを最初にぶつけ合って、早く理解することができたのがよかった。作品について聞かれるといつも言うんですけど、「俳優」という世界において僕と恭サマは対極にあって、お互いもっとも遠いところにいる。だからこそ、この作品が生まれたのだと思っています。

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