「神話に登場する幻の帯を再現」 ドキュメンタリー映画監督が語った徹底取材の裏側

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“人類最古の植物繊維”を取材

 北村監督はヒマラヤやチベットといった秘境を踏破した冒険家という顔も持つ。本作では撮影クルーたちとともに、糸ではなく樹皮から作る原始布を求め、国内の各所と“人類最古の植物繊維”が残っているパプアニューギニアの村を訪れる。現地では人々の衣服とその素材、そして肌に彫られた入れ墨との関わりを探っていく。

「衣服の紋様は何を意味し、着る者の身にはどんな効果をもたらすのか。印象的な衣の文様の由来とは何なのか。衣服は身を守る、言わば第二の皮膚。各地を旅して織物の神が星の神を服従させることができたのは、衣そのものの持つ力が大きいと感じました。当時の人々が樹木や衣装に施す紋様とその色をはじめ、形が重なって一つの力や意味のようなものを持つと考えたのだと思います」

神話に登場する帯を再現する姿も見どころ

 撮影の過程では、倭文の素材が当初に想定していた麻ではなく、カジの木の樹皮であることが判明。そこでパプアニューギニア、台湾、インドネシアなどの東アジアに生育するカジの木のサンプルを収集し、それら604点のDNA鑑定で、カジの木が日本に渡った二つのルートを探っていく。

「記録には平安期より以前、天皇の即位後に行われる大嘗祭の際に、カジの木の糸で織った真っ白な布が納められていたと記されています」

 先の山口氏を含む4人の織物職人らがカジの木の糸を手作りし、試行錯誤を重ねながら、神話に登場する帯を独自のイメージで織り上げる姿も見どころのひとつだ。

 麿赤兒(81)と大駱駝艦、コムアイ(31)による神話の再現と、ファッションモデル冨永愛(41)の語りが観客を悠久の歴史の世界へ誘う。

週刊新潮 2024年5月30日号掲載

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