「神話に登場する幻の帯を再現」 ドキュメンタリー映画監督が語った徹底取材の裏側

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「神話に登場する帯を作りたい――」

 日本最古と伝えられる幻の織物・倭文(しづり)。その起源を探り、再現を目指すドキュメンタリー映画「倭文 旅するカジの木」が、5月25日から全国で順次公開される。

「京都で10代続く西陣織の帯匠である山口源兵衛さんから“衣の原点を探ると、倭文という訳の分からないものが出てくる。そのルーツを探る作品を撮らないか”というお話を頂いたのがきっかけです」

 そう語る北村皆雄監督(81)は、映像民俗学という独自のジャンルを開拓し、国内外で記録映画やTVドキュメントを手がけてきた。

身に着ける者を保護する神聖な力が

 奈良時代に成立した歴史書「日本書紀」の一節には、天上界から来た二人の武の神が地上を平定したものの、星の神だけは倒せなかった。そこで新たに天上界は織物の神を地上に遣わし、星の神を服従させた……という短い物語が記されている。まさにその織物が倭文である。

 独特の白さは光を象徴し、穢(けが)れをはらい、身に着ける者の体を保護する神聖な力を備えていたとされる。一方で、どんな素材が使われていたのか、なぜ「織物」の神の力が「武」の神の力を上回るのか……といった疑問が残されていた。北村監督は「それこそが足かけ5年にわたる撮影の出発点だった」と振り返る。

「民俗学者の柳田国男や折口信夫も指摘していますが、生まれたばかりの赤ん坊が乳を飲む前に身に着けてから、年を取って死に至るまで、生涯まとい続けるのが織物から作られた衣です。しかし、衣食住の筆頭でもあるはずの衣のルーツは、これまであまり深く追究されたことがありませんでした」

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