優勝した大の里は「自分の相撲がよく取れていた」「番付の意味がなくなってきている」【音羽山親方の夏場所総括】

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番付の意味がなくなってきている

――11勝4敗の優勝にならなくてよかったということですね。

音羽山:見ているお客さんは楽しいと思いますけどね(笑)。春場所の尊富士、夏場所の大の里のように新しい力士が出てくるのは喜ばしいことですが、上位陣がちゃんと彼らの壁にならないと! 大相撲には、横綱、大関、三役……などと、番付がありますが、その番付の意味がなくなってきているんですよね。

 たしかにひと昔前(2020年以前)も、平幕・旭天鵬関が初優勝する(2012年夏場所)など、番付下位の力士が優勝することがありましたが、ごく稀なこと。後半戦まで平幕力士が好成績で走っていても、最終的には横綱、大関が勝って、場所を引き締めていましたからね。

――横綱、大関陣がだらしないということですね。

音羽山:極論を言えば、そういうことです。上位力士だけじゃなくて、力士は全員自分の地位にプライドを持つべきです。たとえば、幕内力士だったら、(入れ替え戦などで対戦する)十両の力士になんか負けていられるか! とか、十両力士でも幕下の力士に負けられない! など。夏場所、千秋楽まで出場した大関・豊昇龍、大関・琴櫻をはじめ、三役の先輩力士たちは、入門7場所の若者に優勝をもぎ取られて悔しくないのか! と言いたいですね。

霧島はいろいろなものを見つめ直すことが必要

――プライドが大切なんですね。大関2場所目の琴櫻関(琴ノ若から改名)は11勝4敗と、それなりの成績を残しました。

音羽山:優勝決定戦には進めなかったものの、11勝という数字は、大関としての責任は果たしたと思います。そして、4月から私の部屋に所属が変わった大関・霧島は首の負傷で7日目から休場となり、大変ご迷惑をおかけいたしました。これで2場所連続の負け越しとなり、来場所は関脇から再出発ということになりますが、立て直していくのは簡単なことじゃないと思っています。日ごろの態度、相撲への向き合い方など、いろいろなものを見つめ直すことが必要でしょうね。

――なるほど……。その他、さきほど話が上がった大の里関の天敵、平戸海関は前頭2枚目で9勝。11日目を終えて2敗と優勝争いに絡んだ湘南乃海関(前頭10枚目)の新鋭に関してはいかがですか?

音羽山:平戸海の相撲はスピードがあって思い切りがいいところが魅力です。来場所は新三役に上がりそうですが、勢いだけでは上位陣を食っていけないので、大の里戦で見せたような技術を磨くことが大切でしょう。

 そして、湘南乃海。体格に恵まれている(194センチ、190キロ)のに、幕下でモタついていた頃がウソのように、力がついてきました。でも、メンタル面が弱いね。優勝争いがちらついてきたら、4連敗して結果的に9勝に終わったのは残念でした。

大関陣の頑張りで高レベルの優勝争いを

――さて、大の里関の勢いは7月の名古屋場所でも続きそうですか? 名古屋場所で12勝くらい挙げれば、「大関昇進」との声もありますが……。

音羽山:大きく崩れることはないでしょう。それよりも大関陣がもっとがんばって、高レベルの優勝争いを見せてほしい。その結果、大の里が連続優勝したら、大関昇進は見えてくるでしょうね。

武田葉月
ノンフィクションライター。山形県山形市出身、清泉女子大学文学部卒業。出版社勤務を経て、現職へ。大相撲、アマチュア相撲、世界相撲など、おもに相撲の世界を中心に取材、執筆中。著書に、『横綱』『ドルジ 横綱朝青龍の素顔』(以上、講談社)、『インタビュー ザ・大関』『寺尾常史』『大相撲 想い出の名力士』(以上、双葉社)などがある。

デイリー新潮編集部

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