芦原さんは「ウソ」であしらい、脚本家には「原作者批判」で敵意を煽る…日テレ「セクシー田中さん」調査報告書で浮上した「プロデューサーの大罪」
芦原さん抜きの会議で「キャラクターの設定変更」
食い違いはここから始まっている。原作者にとっては原作が守られることが大前提だ。一方、ドラマプロデューサー側は「改変できない原作など取り扱わない」という意識を露わにしていた。
そして今回がゴールデン・プライムタイムでの初作品だった現場プロデューサーは、原作者がいない場所で脚本家らを交えて「よりよいドラマ」のための議論を行い、原作者にはその結果だけを伝えた。
報告書にはこんな例が書かれている。
原作では主人公「田中さん」を慕う後輩「朱里」について、父親のリストラなどもあって短大に進学したという設定になっていた。
しかしプロデューサーらの会議では「短大は最近の若者にはリアリティがないのでは」「リストラはドラマとして重すぎる」等の意見が出て、結局「父の会社が不景気になり、本当はかわいい制服の私立高校に行きたかったけど、公立高校に行くことにした」という設定に変え、芦原さんに返した。
それに対して芦原さんは、かわいい制服など「心底どうでもいい」と回答したという。プロデューサーなりの「よりよいドラマ」のための議論だったのだろうが、議論の過程なく突然結論だけ伝達されたら、どんな原作者も疑心暗鬼になるだろう。
日テレに弁護士を通じて内容証明郵便まで送っていた脚本家
そして去年10月上旬、決定的な出来事があったことを報告書は明かしている。
ある場面に想定と違う点があったため、芦原さん側がプロデューサーに問い合わせをした。これに対してプロデューサーは「そのシーンはもう撮影してしまった」と答えた。
しかし、それはウソだった。
実際にはそのシーンは撮影前だったが、芦原さんから何か言われて今から変更になったら大変だと、プロデューサーは撮影が終わったことにしたのだった。しかしその後これが芦原さんの知るところとなり、信頼関係は壊れていった。
そうした中でドラマ終盤を迎え、原作漫画が未完でドラマオリジナルとなる部分について、芦原さんは自分の手で脚本を書くことを選んだ。
そのことを脚本家に伝える際、プロデューサーは「自分も大変憤っているがこれをのまないと放送できない」と説明、脚本家は最終話放送後にSNSで「最後は脚本も書きたいという原作者たっての希望があり、過去に経験したことがない事態で困惑した」と芦原さんを批判するような発信を行った。
さらに脚本家は今年1月16日、弁護士を通じて日本テレビ側に内容証明郵便を送付し、芦原さんが脚本を書いたドラマ第9話、第10話には自分のアイデアも含まれているので自分を脚本家としてクレジット(氏名表示)するよう要求。事態が混迷する中で芦原さんは同月26日に事の顛末をブログで公開、3日後の29日、亡くなったことが分かった。
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