テレ東は不適切表現で即、打ち切り、かつては取材中に死者も…「警察密着番組」の多すぎる問題点

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テレビ局と警察の距離は?

 もっと根元的な問題も以前から指摘されている。「警察を含めた公権力の監視役も担っているはずのテレビ局が、警察側のPRに加担していいのか」という問題である。事実、「密着」や「警察24時」を謳い文句にしながら、全国の警察内で起きている不祥事を各番組が扱ったことは1度もない。

 市民の関心が高い未解決の凶悪事件には触れないのも特色。「八王子スーパー強盗殺人事件」(1995年)、「柴又三丁目女子大生殺人 放火事件」(1996年)、「世田谷一家殺害事件」(2000年)などはやらない。未解決を強調されては警察の立つ瀬がなくなるからではないか。また、そもそもドキュメンタリータッチのエンタメ番組だからだろう。

 警察密着特番は視聴率面でも難しい時代に入っている。この春の改編期の視聴率を見てみると、かつては旧基準である世帯視聴率で20%を超えていたが、その勢いは完全に消えている。以下、()数字はその放送時間帯での順位だ。

 フジテレビが2月20日の午後9時から2時間放送した「逮捕の瞬間!警察24時~密着!捜査の最前線 凶悪犯を大追跡SP~」は個人3.4%(6)、コア(13~49歳の個人視聴率)1.6%(4)。(数字はビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)

 内容は「似顔絵の“わいせつ男”を追え!ママさん刑事が執念の捜査」「卑劣!10代女性にわいせつ行為 男が身勝手な言い訳」など。やはりドキュメンタリータッチのエンタメなのである。子供のいる女性刑事を「ママさん刑事」と呼ぶのは各局の共通点だ。

 テレ東が3月6日午後6時25分から2時間35分にわたって放送した「激録・警察密着24時!!薬物&カーチェイス!春の一斉取り締まりSP」は個人3.7%(5)、コア2.1%(5)。

 こちらの内容は「パンツに大麻を隠し持つ男!?」「不可解な男女トラブル『助けて!』女性のSOS通報は嘘!?」など。

 テレビ朝日が3月25日午後7時から2時間54分にわたり流した「列島警察捜査網 THE追跡2024 春の事件簿」は個人4.9%(2)、コア2.5%(3)。テレ朝は警察密着特番のパイオニアだけにいつも他局より視聴率が良いのだが、それでも時間帯でのトップは取れなくなっている。

 内容は「神奈川 自動車警ら隊を追跡”ハマの千里眼”が狙う不審人物」「京都 向日町署刑事課を追跡 万引き親子の“カゴ抜け”の手口」など。「ハマの千里眼」など警察官にニックネームを付けたがるのも各局共通の特色である。

 ほかの局は春の放送はなかったものの、日本テレビは「悪い奴らは許さない!!警察魂」、TBSは「最前線!密着警察24時」と題して放送中。しかし、視聴率は決して高くない。約46年もほぼ同じスタイルで続けてきた上、各局がやっているから、さすがに飽きられたのではないか。

 テレ東の不祥事によって、これからは他局の警察密着特番に向けられる目がより厳しくなる。視聴率が落ちていることとコンプライアンスの問題もあるから、次々と消えていく可能性もある。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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