「今くるよさん」「八千草薫さん」「星野仙一さん」…日本人に「すい臓がん」急増の理由と、コロナで注目「メッセンジャーRNA」を使った驚きの最新治療法

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解明近づく「すい臓がんの発症メカニズム」

 そんななか、海外では「すい臓のなかにカビが巣くう」ことでがん化するとの研究報告が登場しているという。

「すい臓のなかを走る膵管と、肝臓と胆のうから伸びた総胆管は十二指腸に接する辺りで結合し、その部分をファーター膨大部と呼びます。すい臓から分泌される膵酵素と肝臓や胆のうから分泌される胆汁は、このファーター膨大部を通じて十二指腸へ流れ込みます。しかし十二指腸内の食べ物の一部が同部を経て膵管に逆流し、すい臓のなかに(がんを誘発する)カビが入り込む可能性が指摘されているのです」(岡田氏)

 さらなる研究によって、すい臓がんの「原因解明」へと近づくことが期待されているそうだ。

驚きの「最新治療法」

 また治療法に関しても最近、新たな動きが――。

「すい臓がんに関しては現在、ワクチンを使った2つの治療法が注目されています。一つが『ELI-002 2P』と呼ばれるワクチンで、すでに初期段階の臨床試験を終え、今年後半から第2相臨床試験が始まる予定です」(岡田氏)

 すい臓のがん(腫瘍)の90%以上にがんの進行を促すKRAS遺伝子の変異が見られるとされ、米テキサス大を中心とした研究チームはこの“KRAS変異”を免疫細胞に〈標的〉と認識させ、攻撃させるワクチンを開発。第1相臨床試験では、ワクチンを投与した84%(25人中21人)に期待された反応が見られたという。

「もう一つが、コロナ時に脚光を浴びたメッセンジャーRNAを使ったワクチンです。ドイツのビオンテック社が開発中のもので、『個別化メッセンジャーRNAワクチン』と呼ばれています。“個別化”とは患者ごとの遺伝子情報に合わせたワクチン製造が可能なことを指し、投与によって免疫機能の向上をもたらすという。総合科学誌『ネイチャー』に掲載された論文では、同ワクチンが“すい臓がんにも効果がある”とされ、話題を集めました」(岡田氏)

 こちらもまだ第1相臨床試験が行われた段階だが、すい臓がん治療の「切り札」として期待する声は多いという。

デイリー新潮編集部

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