「よろしく進めてくださいね」 美智子さまが皇位継承議論で異例の“お声がけ”の理由とは

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「お体にご年齢相応の衰えが」

 前述の小泉政権下で官房長官の任にあった安倍元首相は“男系継承論者”にもかかわらず、女系を容認した政府の方針に従わざるを得なかった。その心中はもどかしさで満ち溢れていたに相違なく、現に民主党政権が制度改正に向けて動き始めたさなか、

〈いったん消え去ったはずの、「女性・女系容認」の議論が、今また「女性宮家創設」と形を変えて復活しようとしている〉(「文藝春秋」12年2月号)

 といった内容の論文を寄稿していたほどである。かように「女性宮家」構想は安倍政権下で“敵視”されながらも、

「17年6月に成立した上皇さまの退位に関する特例法では『安定的な皇位継承を確保するための諸課題』『女性宮家の創設』等につき、すみやかに検討するよう政府に求める附帯決議が盛り込まれていました」(同)

“すみやか”どころか政権の怠慢で引き延ばされ、挙げ句、ご夫妻の念願だった「女性宮家」についても先の有識者会議の報告書では記述が消えているのだから、上皇后さまがお気持ちをはやらせても何の不思議もないのだ。

「上皇后さまも10月で90歳になられます。お体にご年齢相応の衰えがうかがえるにもかかわらず、日々なさっている一つ年上であられる上皇さまのお世話は、片時も気を抜けないお務めであられる。そんな中、お孫さん方のために現在できる限りのことを精いっぱいなさろうというご覚悟をお示しになっておられるのだと拝察いたします」(同)

 来るべき次代のために、御身を挺して皇室の将来への道筋をつけたいとのおぼしめしだというのだ。

一転、完全沈黙した額賀議長

 あらためて額賀議長に尋ねると、

「ようやく第1回の会議が開かれたところです。各党が意見を出してくれて、私はその意見を聞く立場。粛々と議論していくのは当然のことです」

 そう力説しながらも、本誌(「週刊新潮」)が、

「上皇后さまのご意向があったと聞きましたが」

 と告げるや、

「…………」

 それまでの冗舌がうそのように突然沈黙。しばし静寂ののち、一方的に電話は切れてしまったのだった。

 皇室制度に詳しい名古屋大学大学院の河西秀哉准教授は、

「今回の議論開始は、直近でいえば旧統一教会問題や裏金事件など政治的な事情もあり、遅れに遅れてしまった。そのしわ寄せが最も及んだのは皇室の方々であるという事実は、忘れてはならないと思います」

 そう指摘しながら、

「皇族数確保の議論は、これが最後のタイミングだと思います。佳子さまは30歳目前で、愛子さまも就職なさいました。お二方ともいつ結婚されて皇籍離脱なさらないとも限りません」

 続けて、以下のように懸念するのだ。

「女性皇族がご結婚後も身分を保持するにあたり、その夫や子はどうなるのでしょうか。自民党案では一般国民の扱いとするとのことですが、住居や生活費、警備といった観点のほか、例えば皇族の夫の職業はどうするのか、選挙権や被選挙権は行使できるかなど、検討すべき部分は多くあると思います。しかし、これを制限すれば基本的人権を制限することになる。小室圭さんのケースは、結婚して皇室を離脱する内親王でしたが、これとは違います。この点は、しっかり考えておかなければならないと思います」

 前編では、「さすがに拙速に過ぎる」との声も上がる皇位継承議論の現在地点について報じている。

週刊新潮 2024年5月30日号掲載

特集「ついに国会で『安定的皇位継承』議論 憂慮の果て『美智子さま』が動かれた」より

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