声優の不倫はなぜ泥沼化する? 櫻井孝宏に続き古谷徹も 不倫がバレた声優たちに見る意外な共通点

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「売られた」古谷と櫻井 鈴木が売られなかったのは公私ともに「オラオラ系」だったから?

 話を蒸し返してしまうのは恐縮だが、古谷さんと同様に女性側から告発されたパターンとしては2022年の櫻井孝宏さんが思い浮かぶ。既婚者であることを隠したまま、自身のラジオ番組の放送作家A子さんと10年にわたって交際していたことが明らかになっただけでなく、15年交際していたというB子さんが週刊誌に登場し大騒動となった。古谷さんのケースと同様、ファンレターに連絡先を書いたことがきっかけだったという。

 櫻井さんといえば「鬼滅の刃」の冨岡義勇や「呪術廻戦」の夏油傑など、クールな天才肌キャラの役が多い。女遊びどころか女の影もないような、孤独感を漂わせた役が得意な人だ。でも実生活では10年越しの3股をしていたと知ったB子さんからすれば、キャライメージを逆手にとって遊ぶ男という印象に転じ、復讐心が芽生えたのではないだろうか。

 櫻井さんと同様に名前の挙げられた鈴木達央さんは、やはりファンとの交際という点は同じだが、タレこまれてはいない。不倫発覚の数カ月前には「東京卍會 副総長 龍宮寺堅(ドラケン)の声を任されてる、鈴木達央と申します」と「東京リベンジャーズ」の東京卍會の刺繍が入った特攻服の背中が映った写真をSNSに投稿したり、「ドラケンを演じているからかな。やっぱり背中で語る感じになっちゃったよね。なんか…ごめんな」など、キャラと自分を同一視した古谷さん同様のナルシシズムはうかがえるものの、不倫相手もノリノリで匂わせ投稿を繰り返していた。関係者によれば普段もオラオラ系だったという鈴木さん、「七つの大罪」バン役、「うたの☆プリンスさまっ♪」黒崎蘭丸役など、男っぽい役どころを得意としていただけに、私生活での振る舞いとキャライメージの乖離があまり無いタイプだったのかもしれない。文春砲の直撃後に自殺未遂を起こしたという報道を見て、初めて不倫相手も鈴木さんの繊細な一面に驚いたことだろう。

役作りに定評のある声優ほど諸刃の剣 「役を愛する」ことと「役になりきる」ことの怖さ

 俳優にしろ声優にしろ、「家に帰っても役が抜けない」という人がいる。キャラクターへの思い入れや熱意を感じさせる美談として語られることも多い。

 古谷さんもアフレコの時、役作りのためにそのキャラに応じたファッションで臨むと以前話していた。安室コスプレをしたこともあり、今回の件が明るみに出るまでは、ファンサービスの上手な人という評価をされていたものだ。

 しかし「役作り」「役を愛している」という錦の御旗のもと、振り回される方はたまったものではない。かつて「3年B組金八先生」放映時、武田鉄矢さんは家庭でも金八口調で夫人に話しかけて嫌がられたという。

 古谷さんもまた、恋仲となる女性キャラ役の声優に「彼女(女性キャラのこと)を好きになりたいからハグさせてくれない?」と言ったという逸話が残る。ファンイベントでもハグや添い寝などしていたというが、イケメンキャライメージを壊さないという、役作りの一環という意識があったのかもしれない。不倫相手に対する安室ボイスも、ファンサービスの延長線上だと考えていたのではないだろうか。役を愛するがゆえの行動は何よりもいいことだと思い込んでいて、家庭だけでなくファンや原作者に大迷惑がかかるリスクなんて、考えたこともなかったに違いない。

 なお櫻井さんも鈴木さんも、女性関係はだらしないが、役作りへの真剣さには定評があった。演じるキャラの解像度が高いほど、とりこになるファンは増える。そしてモテるようになっていく。役柄が抜けないほどのめりこむ人ほど、自分を客観的に見られなくなる。そして不倫が泥沼化してしまうというループが起きてしまうのではないだろうか。

 キャラ人気は自分の人気じゃないのに、カン違いしたイタいおじさん。冷静に見ればその通りだが、しかし一般人の考えが及ばぬほどにカン違いできる自己陶酔ぶりが、国民的人気キャラとして愛され続ける「役作り」と表裏一体にあるともいえるだろう。

 さて古谷さんとは近い世代だが対照的だと思ったのは、74歳の舘ひろしさん。「あぶない刑事」新作映画の舞台あいさつで「お二人が目で追ってしまうような女性はどんな女性なんですか?」と西野七瀬さんに聞かれ、「奥さんです」と即答した。舘さんだってダンディー鷹山だって若い女性からもモテるだろうが、そこでフラつかないのがダンディーたるゆえん。役作りという建前に逃げず、ファンに愛されるキャラクターを汚さないという本質を理解した受け答えに役者魂を見た。古谷さんは、ブライトさんでなく舘さんに一度たたいてもらうとよかったのかもしれない。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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