「レインボーの髪の毛が保てるか不安」 志茂田景樹氏が語った施設暮らしへの期待と不安

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施設での楽しみは

 むしろ、これから始まる施設での暮らしに前向きな姿勢のようで、

「施設の入居に際して、憂うような気持ちはありません。別荘暮らしが始まるのだと思って、楽しみにしています。 特に楽しみなのは依頼原稿の執筆かな」

 現在、氏はSNSの投稿も含めて、文章を書く時にはPCの音声入力を使用している。ベッドの上で音声を吹き込み、それをあらためてPC上で直す作業を行っているのである。

「若い頃は原稿用紙15枚分を1時間で書けたし、東京~大阪間の(新幹線の)往復で小説を1本書き上げたこともありました。でも、今はキーボードで1字ずつしか打てないので、400字詰めの原稿用紙1枚半分を書くのにも1時間かかります」

 執筆のほかにも、楽しみを見つけていて、

「せっかくいろんな人と生活するのだから、リアルでのコミュニケーションを大切にしたいですよね。イベントで時々カラオケをするらしいので、皆さんの前で沢田研二の『勝手にしやがれ』を歌って度肝を抜きましょうかね。他にも麻雀のイベントもあるらしく、頭の体操にはもってこいです。ただ、牌を打つ時には誰かに手伝ってもらわなければいけませんね」

「レインボーの髪の毛が保てるか不安」

 唯一の不安はヘアスタイルのことだと言う。

「レインボーの髪の毛が保てるか、少し不安です。介護専用タクシーで美容室に行っても、シャンプー台に上げてくれる人がいなければなりませんので。友人や施設の人にお手伝いしてもらえるのかどうか次第ですが、場合によってはこの髪色とはお別れになるかも」

 そして最後にこう語る。

「私の余生のテーマは“カタツムリ”。ゆっくり歩み続けたいと思います。年を取ると、自分の人生は終わりだと思ってしまいがちですが、誰だって今が出発点。余生を過ごすだけだと思わず、これからできることをするという心持ちでいることが、人生を楽しむスパイスになるのだと思います」 

 速筆で知られた作家が、老年に達した境地である。

週刊新潮 2024年5月30日号掲載

ワイド特集「今そこにある危機」より

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