中日「最強の助っ人」と言われたビシエドは構想外なのか…交流戦で改めて注目される去就
早めの一軍昇格
5月28日、セパ交流戦が開幕した。中日ドラゴンズの交流戦開幕投手・高橋宏斗(21)は8回途中でマウンドを降りたが、埼玉西武の打線をゼロに抑えた。昨年は5人目となる「交流戦防御率0.00」を達成しており、2年連続となれば史上初の快挙となる。しかし、対戦を控えるパ・リーグ各球団スコアラーの関心は高橋ではなく、内野手のビシエド(35)に向けられていた。
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「交流戦に合わせて、中田翔(35)がチームに戻ってきました。15日の阪神戦で自打球を左足首付近に当て、庇って走ったため、右太股まで痛めていたのです」(名古屋在住記者)
中田は26日のウエスタン・リーグ広島戦に出場した。3打数1安打、打点1と結果を出したが、実戦復帰はこの試合のみ。早めの一軍昇格に、記者たちの間では「またこんなに早く上げるのか?」との声も聞こえていた。
「というのも、中島宏之(41)が4月13日の阪神戦で右手にデッドボールを食らい、18日に『右第5中手骨骨膜損傷』と診断されて登録抹消。その後、5月10日のファーム戦で実戦調整を始め、5打席立っただけで、14日には一軍へ昇格させています。立浪監督は“代打の切り札”として期待しているようですが…」(前出・同)
この時、担当記者や関係者の間では「一軍に上げるのは中島よりビシエドのほうが先では?」との声が多かったという。ビシエドは開幕メンバーからも漏れ、二軍落ち。しかし、二軍では絶好調で打率3割強、5月の月間成績ではOPSが9割9分1厘を記録している。
ビシエドのポジションは中田や中島と同じ一塁だ。中田が負傷降格となった16日に入れ替わりで一軍に昇格した。以後、スタメン出場する機会もあったが、今回の中田復帰により、ベンチスタートとなっている。これまでに首位打者、最多安打のタイトルを獲得。「球団史上最強の助っ人」と呼ばれ、昨年6月には日米通算200本塁打を放ったものの、3度の2軍落ち。来日8年目で最低の成績に終わった。昨オフに国内FA権の取得条件を満たしたことから、日本人選手扱いとなった今季は、3年契約の最終年。しかし、立浪監督はビシエドの23年成績(打率2割4分4厘、6本塁打、23打点)を指して、こう話していた
「この成績では助っ人として、ちょっと物足りない。(来季の起用法は)まだ白紙」
開幕から1カ月半が経過し、埼玉西武では松井稼頭央監督(48)が成績不振で休養した。下位に低迷する球団は、戦略の見直しと共に有効な補強を考え、他球団でくすぶっている有望選手に、関心が集まる時期でもある。「ビシエドは既に構想外、トレード放出なのか」――これまで何度も囁かれてきたこの話が、交流戦突入と同時に改めてクローズアップされている。
パのスコアラーがビシエドに注目
「特にパ・リーグ球団のスコアラーがビシエドに注目しています。打撃については、ファームでの成績の通り、特に問題ないと判断されているので、グラウンドに出ていないときの一挙手一投足まで、しっかりチェックする予定だといいます。DH候補として獲得した場合、チームに貢献してくれる選手なのかどうかを見極めるそうです」(在京球団スタッフ)
例えば、今季初スタメンとなった16日の阪神戦。根尾昂(24)が阪神・原口文仁(32)に試合を決定付ける3ランを浴びた後、真っ先にマウンドに行き、声を掛けたのがビシエドだった。
「そうした細かい心配りや、チームを鼓舞する姿勢なども観察されていますよ。交流戦の間に話をまとめ、リーグ戦再開時にはトレードが決まるのでは、とみる他球団のスタッフもいます」(同)
中田を昇格させたことで、中日の一軍登録選手数はMAXの31人になった。
「中田が中日に移籍した昨年オフの時点で、ビシエドに興味を持つ球団は少なくありませんでした。トレードがまとまらなかったのは高額年俸に尽きます。ビシエドは22年から3年1000万ドルの複数年契約を交わしており、今季の支払い分は3億5000万円と言われています。獲得球団はその契約が基準になりますが、今季も新加入の外国人選手に泣かされている球団は多く、『未知数の外国人選手を緊急獲得するよりも、実績十分のビシエド』が欲しいというチームもあるようです」(前出・同)
ビシエドの去就にはチームの支配下選手の問題も絡んでいた。中日は5月5日に前阪神外野手で育成契約していた板山祐太郎(30)を支配下に昇格させた。そのため、支配下選手数は68人となり、MAXの70人まで「あと2人」となってしまった。もっとも、シーズンに入ってから育成選手を昇格させる、あるいは70人枠のギリギリで試合をしているチームは他にもある。だが、中日の場合は少し事情が異なるようだ。
「残りの2人枠をどう使うかが、ペナントレース中盤以降のカギとなります。現在、中日の育成にはトミー・ジョン手術から復活した岩嵜翔(34)、成長著しい松木平優太(21)、先発転向で復活した岡田俊哉(32)の3投手が好投しています。しかも岩嵜と岡田は防御率1点台。でも、チームのバランスを考えると、今季中の昇格は無理だと思われます」(前出・名古屋在住記者)
現支配下選手68人の内訳は、投手32人、捕手6人、内野手16人、外野手14人。「投手人数がやや多め」だ。中日は先発、救援陣ともに好投手が多く、補強を急ぐ必要はない。
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