ミニストップは迷走している… 「ローソンかと思った」生鮮を導入した新型店舗ルポ

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“あと一歩”なサービス

 もっとも、新型店舗の売りは生鮮だけではない。ソフトクリームを筆頭に、スナック類の質の高さで知られるミニストップのブランドを活かした“専門店品質”の商品も注目だ。

「セルフオーダー端末で注文してすぐに作ってくれるホットドッグ(214円)は主食になるし、いいと思います。ただ“専門店品質”を謳うのであれば、パンとソーセージだけでなく、刻み玉ねぎも欲しいところ。私が気になったのは氷とソフトクリーム、フルーツが入った『シェイクソフト』(590円)です。ミニストップが展開するソフトクリーム専門店の商品が、新店舗ならば食べられるというのは魅力的。マンゴーを試食させてもらいましたすが、大ぶりにカットされていて食べ応えがありました。その反面、大きすぎて、ストローで潰してもなかなか吸うことができませんでした。500円以上する価格帯の商品であることを考えると、フルーツを最後まで食べられるような、お客様目線のもうひと工夫がほしいところ。会場で藤本社長にこの点を質問すると、『鋭意改善します』という反応でしたが」(渡辺氏)

“あと一歩”な状況はフルセルフのレジでも見られた。タバコも客自身が持ち出せるようレジ横に並んでいるのだが、販売には年齢確認が必要なため、フルセルフレジの見える範囲で店員を1人置かなくてはならないのだ。店員がいない場合にタバコをレジでスキャンすると、「店員を呼び出している」との表示がなされ、結局待つことに……。これでは何のためにタバコをセルフで扱えるようにしたのかわからない。

大失敗はしないだろうが…

 ミニストップをめぐる状況は厳しい。藤本社長は「24年度はアプリ、Eコマース、クイックコマース、地域がつながり、リアル店舗と融合させOMO(=とオフラインの融合を意味する「OMO(Online Merges with Offlineの略)を実現する」と強調するものの、ミニストップアプリのダウンロード件数は160万件にとどまっている2,000万ダウンロード記念をおこなっているファミリーマートのアプリ「ファミペイ」と比べると見劣りしてしまう。

 今回の新型店舗はあくまで「研究開発的な位置づけ」としつつ、さらに増やしていく意欲もミニストップは見せている。近隣にイオンフィナンシャルサービス株式会社と株式会社イオン銀行、イオンディライト株式会社など複数のイオングループ企業の本社がある“お膝元”ゆえ、新店はそう簡単に失敗しないだろう。だが成功したとしても、そのまま全国へ展開できる材料になるかといえば疑問が残る。

 渡辺氏はミニストップを待ち構える未来について次のように説明する。

「同じイオングループ内の小型スーパー『まいばすけっと』が急成長し、1都3県の店舗数は1,130店を超えました。コンビニが得意としたドミナント出店を駆使し、低価格でコンビニに優位性を示して、2,000店舗を目指しています。今の『ミニストップ』がこれに対抗できる術を持っているとはなかなか思えません。 もしも代名詞であるソフトクリームを『まいばす』に持っていったとしたら……何がミニストップに残るでしょうか。もし、店内厨房のあるミニストップを買収するコンビニが現れるとしたら、ローソンかもしれません」

 フラッグシップ店の看板から消えた黄色は“イエローカード”になっていたのかもしれない。2枚目をもらうことなく、ピッチで存在感を取り戻すことができるのか――。

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