「機体を傷つけるなんて、パイロットの恥だった」 元機長もため息…なぜJALで重大トラブルが相次いでいるのか

国内 社会

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1月2日の衝突事故から半年足らずで…

 自らを〈日本の翼〉と称してきたJAL(日本航空)の相次ぐトラブルは、国交省も看過できない事態となっている。なぜJALで重大なトラブルが頻発しているのか――。

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 いったいJALはどうしてしまったのか。年明け1月2日に羽田空港で起こった海保機との衝突事故から半年足らずで、JALは国内外でトラブルを繰り返し起こしている。

 まず直近では5月23日、羽田の駐機場でJAL機同士の主翼が接触するトラブルが発生。一機は北海道・新千歳行きの便で、もう一機は乗客の搭乗前だったが、共に主翼が損傷して運航継続が不能となってしまった。

 その2週間ほど前の10日には、九州・福岡空港で誘導路の停止線を越えて滑走路に入りかけたJAL機が、離陸のため加速中だったJAL系列のジェイエア機と、あわや衝突寸前のトラブルを引き起こしている。このほか海外でも同様の「誤進入」やパイロットの飲酒トラブルなどが多発しており、乗客が安心してシートに身を委ねられる状況でないことは否めない。

「機体を傷つけるなんて、パイロットの恥だった」

 これらを重く見た国交省は、5月24日と27日、羽田のJAL関連施設に異例の「臨時監査」を実施。トラブルの実態について調査を行ってもいるのだ。

「僕らの時代は“機体を傷つけるなんて、パイロットの恥だ”という教育を受けてきましたからね。翼同士がぶつかること自体があり得ませんよ」

 とは、元JAL機長で航空評論家の杉江弘氏だ。

「国交省の臨時監査もJALばかりですよね。そのような監査が何度も入るなんてこと自体、僕らの時代では考えられなかった。OBたちも“どうしてこうなってしまったのか”“不思議でならない”と口々に言っています。そもそも一連のトラブルはヒューマンエラーに起因するものが多い。現在のJALは社員にどんな教育指導をしているのか。危機管理意識が薄いと感じます」

「取り扱い便数は20年で1.6倍になっているのに…」

 深刻なのは、前述の福岡のトラブルでは管制側にもミスがあった点だ。その管制官は国交省の管轄下にある。つまりJAL社長に「厳重注意」した側も、実は脛に傷持つ格好なのである。

「昔と比べて明らかに仕事量が増えているのに、人員不足で休息も満足に取れない状態でしたね」

 と明かすのは、さる国内の国際空港で働くベテランの管制官だ。

「例えば、管制官は40~50分くらいで持ち場を交替しますが、そのタイミングでトイレに立つと、それをもって『休憩』扱いとされていました。そうしないと仕事が回らないので当たり前と思っていましたし、周囲も労務管理上は問題ないという風潮でした。とはいえ、管制官は瞬時の判断力や集中力が求められる仕事。人手不足で多忙な職場になれば、ヒューマンエラーのリスクも高くなってしまいます」

 内閣人事局が各府省庁に対し、職員を5年間で1割削減という目標を課しているが、国家公務員である管制官も例外ではない。年度ごとに人員が削られ続けているというのだ。

「コロナ禍が終わり、特に羽田や福岡のような混雑空港では発着本数が増え続けています。日本全体で見ても、この20年で取り扱い便数は1.6倍に増加しているのに、働く人が増えなければ無理が出て当然です。こういった問題は管制官だけでなく、グランドハンドリングと呼ばれる空港の地上支援業務、航空機のけん引車を操る作業員などの現場にも顕著です」(同)

 5月27日、CA出身のJAL「初の女性社長」である鳥取三津子氏(59)は国土交通省に呼びつけられた。同省航空局長を前に深々と頭を下げる様は大々的に報じられたが、この先事態は改善されていくのだろうか――。

 有料記事「『便数は1.6倍に増加したのに職員は増えず』 JALで相次ぐ重大トラブル…原因を徹底検証 元機長は『機体を傷つけるなんて、パイロットの恥』」と5月30日発売の「週刊新潮」では、JALで重大なトラブルが頻発している背景、問題の本質についてさらに詳しく、元JAL機長ら専門家の証言と併せて報じている。

「週刊新潮」2024年6月6日号

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週刊新潮 2024年6月6日号掲載

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