壮大な伏線…大物法曹人もこぞって評価 「虎に翼」は史上最強のリーガルドラマと言える理由

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実際の法曹界の男女差

 実際の法曹界の男女差の実態はどうだったのか。司法修習15期生で1963年に裁判官となった元東京高裁部総括判事の木谷明弁護士(86)に聞いた。

「司法試験に合格して研修所に入った段階で、女性は極めて少数でした。50人程度の1クラスに2、3人です」(木谷氏)

 当時の司法試験段階に男女不平等があったかどうかは確認しようがないが、女性は不自然なくらい少なかった。

 寅子の先輩・久保田聡子(小林涼子)のモデルである故・中田正子さんは差別された。1937年だった第26回、久保田は自信のあった口述(2次)で落ちたが、中田さんの試験官はのちに「生意気だから落とした」と認めている。

 一方で木谷氏は東大法学部在学中に合格した。当時の難易度は1万人が受験して300人が合格する程度だったという。

「裁判官への任官にも女性には事実上大きな差別があったようで、問題を感ずるようになってはいました。しかしながら、自分が男性で、『差別される側でなかった』ことなどから、問題意識が極めて強かったわけではありません。ドラマを見ていると、女性にとって、これが重大問題であることがよく分かり、今更ながら自分の憲法感覚の鈍さにあきれています」(木谷氏)

 ちなみに木谷氏は1997年の東電OL殺人事件において、1審無罪になった外国人被告(控訴審と上告審で有罪、再審で無罪確定)の勾留を認めず、有罪率99.9%の刑事裁判で無罪判決を30件以上も出した人。寅子のモデルである故・三淵嘉子さんは新潟家裁所長を務めたが、木谷氏は水戸家裁所長などを経験した。

 木谷氏はこの作品を欠かさず観ており、「素晴らしい」と語る。元最高裁判事の桜井龍子氏(77)は涙を流しながら観ているという。他にも、日弁連会長の渕上玲子氏(69)ら大物法曹人がこぞって観ている。

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