名古屋ポーカー店店長の自殺は「パワハラと過重労働が原因」と遺族が提訴 店側は「失恋のショック」と反論 遺品には「身の毛もよだつ暴行動画」が残されていた

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労基署の判断

 だが、同年10月に出た結果は「不支給」だった。その後父母は処分の取り消しを求めて審査請求、さらに再審査請求まで行ったが結果が覆ることはなかった。

「パワハラについて労基からは『確認できるのは1日のみの暴行で反復・継続している証拠はない』と低く見積もられてしまった」(母)

 時間外労働についても、遺族側は自殺直前の30日間で少なくとも約95時間あったと主張したが、30時間程度しか認められなかった。

「店にその時間にいたからといって業務に携わっていたとは限らないという判断をされてしまいました。一緒に勤務していた従業員は全て店側に味方し、労基の調べに対して店側に都合の良いことしか話さなかったのです。こちらは元店長2人に証言してもらいましたが、2人とも直近の勤務実態まで証言できる立場ではなかったので相手にしてもらえなかった」(母)

 納得のいかなかった父母は、ならば法廷で白黒つけようと、処分の取り消し訴訟を起こすとともに店の運営会社ならびにA氏を訴えるに至ったのである。

店側の反論

 では、こうした遺族の訴えに店側はどう答えるか。店の運営会社の現社長と役員が取材に応じた。社長らは「ご遺族は誤解をしている」と話す。

「遥樹さんはB子への失恋のショックで混乱してしまい、亡くなったとしか思えないのです。実はこれが理由で店の中では、亡くなる直前まで長きにわたり、様々なトラブルが起きていました。その状況についてAは病院と通夜の場で、ご遺族に言葉を尽くして説明したと話しています。通夜に不謹慎な格好で行ったというのもご遺族の思い違いで、礼を欠かないよう、ちゃんとジャケットを羽織り哀悼の意を持って伺ったと。もちろんお香典もお渡ししております」(社長)

 そして、誤解が生じた全ての発端は「暴行動画」だと話すのである。

「あの動画はSNSでも拡散され、世間からも大きな批判を浴びました。暴力は絶対にあってはならないことでそのこと自体について申し開きができません。Aも深く反省しております」(同)

 ただし、手をあげたのにはそれなりのワケがあったと続けるのだ。

「Aは失恋でおかしくなっている遥樹さんに立ち直って欲しいという思いがあってこそ、手を上げてしまったのです。Aは遥樹さんを息子のようにかわいがり、一時は後継にしたいとも考えていました。だからこそ店長を任せていた。そういう人間関係があったから手が出てしまったとも言えるのです。これまでは故人の名誉を害しかねないし、ご遺族の心情も考え、我々の方からの積極的な反論は控えてきました。ただ、法廷にまで持ち込まれ、このような取材を受けるに至った以上、こちらも主張していかねばなりません」(同)

 そして社長と役員は、遥樹さんが亡くなる直前、B子さんへの恋慕でおかしなっていたことを証明する「証拠」について語り出したのであった。

 それは母が中身を見ずにA氏に預けた、店の関係者に向けた3通の遺書だった。遥樹さんはB子さんにも別途、遺書を残していた。後編では遥樹さんが店関係者に残した遺書を元に店側の反論を聞いていく。

 後編を読む【〈名古屋ポーカー店店長自殺〉遺族から「パワハラと過重労働が原因」と訴えられた店側の反論「遺書を見ても失恋が原因だったとしか思えません」

■相談窓口

・日本いのちの電話連盟 電話 0570・783・556(午前10時~午後10時) https://www.inochinodenwa.org/
・よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) 電話 0120-279-338(24時間対応。岩手県・宮城県・福島県からは末尾が226) https://www.since2011.net/yorisoi/
・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談 電話0570・064・556(対応時間は自治体により異なる) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html
・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧) https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php

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