名古屋ポーカー店店長の自殺は「パワハラと過重労働が原因」と遺族が提訴 店側は「失恋のショック」と反論 遺品には「身の毛もよだつ暴行動画」が残されていた

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店のオーナーは病院に駆けつけ、「失恋で思い悩んでいた」と語った

 母は慌てて遥樹さんに電話をかけたがコール音が鳴り響くのみ。すぐに車に飛び乗り、寮や店を探し回ったが遥樹さんとは会えなかった。

 そうこうするうちに長男から電話がかかってきた。

「いま遥樹に電話をかけたら、消防の人が出て…」

 遥樹さんは母のみでなく家族全員に連絡していたのだが、長男は様子がおかしいと電話をかけ直し続けていたのだった。すでに遥樹さんは市内のビルの14階から飛び降りて亡くなっていた。

 母は涙を流しながら、遺体と対面した場面を思い返す。

「現実として受け止められない感覚でした。この時点では店への疑いはなかったので、無断欠勤して迷惑をかけてはいけないと思ってすぐに店にも電話したのです」

 すると、店のオーナーで当時、運営会社の社長だったA氏が出張先から慌ててやってきた。

「A氏は『管理不足で申し訳ございませんでした』と言った後、『彼は店の関係者の女性に失恋して思い悩んでいた』と話しました。初めて聞く話で、その時は混乱していて相手がどんな人で何があったのかもよくわからずじまいでした」(母)

 遺品のリュックには、家族のほかA氏を含む店の関係者へ宛てた3通の遺書があったので、母は中身を見ずにその場でA氏に渡した。

遺品のスマホに残っていた衝撃の暴行動画

 この時点では悲しみを共有していたかのように見える遺族と店側。なぜこの後、対立を深めるようになったのか。きっかけは遺品のスマホから出てきた「動画」だった。母が語る。

「葬儀を終えて1週間くらいしてからのことでした。自宅に帰る長男が『ショックを受けるかもしれないけど見る?』と遥樹のスマホを渡してきたのです。長男と長女は2人で暗証番号を割り出し、ロックを解除していました。遥樹はLINEのKeepメモにその動画を残していたのです」

 動画に映っていたのは、遥樹さんが亡くなる約1カ月前の10月18日深夜1時頃、防犯カメラが映した店内の様子だった。確かにショッキングな内容だった。

 画面に出てくるのは、上着やスマホを手に取り帰り支度をする遥樹さんとテーブルに座って話し込む3人の男性だ。遥樹さんが帰り際、レジのある小部屋に立ち寄った時だった。突然、画面の左隅から水色のジャンパーを羽織った男性が現れた。

 そして遥樹さん目がけて突進。向き合うや否や右足でキックし、右手でパンチ。しまいに壁に向かって突き飛ばしたのである。

 その後は柱などに隠れてよく見えないが、男性が数回左手を振り回している様子が映っている。テーブルで様子を見ていた3人は心配そうに見守り、1人が立ち上がって小部屋へ近づいていく姿も。

 その後も10分以上男性が「説教」しているような様子が残っていた。音声は入っていないが、身の毛がよだつような暴行現場を映した「決定的証拠」だった。

 遥樹さんに暴力を振るっていた男性こそがA氏だった。

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