名古屋ポーカー店店長の自殺は「パワハラと過重労働が原因」と遺族が提訴 店側は「失恋のショック」と反論 遺品には「身の毛もよだつ暴行動画」が残されていた

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 2020年11月に自殺した名古屋市のポーカー店店長(享年25歳)の遺族が「自殺の原因は店のパワハラと過重労働にある」として、店側に約1億円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地方裁判所に起こした。5月29日に第一回口頭弁論が開かれたが、店側は一部暴力行為があったことを認めつつもパワハラと過重労働のいずれも否定。「自殺の原因は失恋のショックにある」と主張し、徹底抗戦していく構えだ。双方に話を聞いた。(前後編の前編)

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亡くなる直前、母にかかってきた電話

「あの日、なぜ息子の兆候に気づいて止めてやれなかったのか…。 今もずっと自分を責め続けています」

 こう語るのは亡くなった井上遥樹さん(享年25歳)の母である。20年11月16日の朝5時頃。母は突然かかってきた遥樹さんからの電話に寝ぼけながら出た。

「引っ越しどうすればいい?」

 遥樹さんはこう聞いてきた。当時、遥樹さんは名古屋市内のポーカー店が借り上げたアパートに住み込みで働いていたが、1週間後に店を辞め、両親が住む同市内の実家に戻ってくる予定だった。母はこう返した。

「まずは引っ越し業者と日程を決めて。手伝いに行くから」

 遥樹さんは「わかった」と言って電話を切った。すると6時頃、今度はLINEにボイスメッセージが届いた。聞こえてきたのは、先程の会話とは打って変わった緊張した声だった。

「お母さん、ありがとう…。本当に今までありがとう。そして、迷惑ばかりかけてごめんなさい…ちょっと、先に…、上に行っちゃうけど…、ごめんね…ありがとうございました」

 音声にはすすり泣く声が絶え間なく響いていた。

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