変わる日本の「傘」事情 “平均で4.2本を所有”が減る?意外な立役者とは

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インバウンド需要も

 かつてのコンビニ傘のライバルは、タクシーの初乗り料金だといわれた。突然の雨で、タクシーに乗るか傘を買うかを消費者は天秤にかけていたわけである。そのため、2017年にタクシーの初乗り料金が730円から410円になったことで、コンビニの傘の売上は少なからずダメージを受けたのである。これに加え、天気予報と雨雲レーダーのスマホアプリ、そして日傘への移行が、コンビニ傘の販売数に変化をもたらしているようだ。

「日傘が人気な理由は、もちろん紫外線を防ぐ目的です。日焼け止めは、『完全にUVをカット』とは表示できないですが、日傘はデータに基づき『100%カット』と表示されています。商品デザインは、シンプルなものが好まれていましたが、今後はカラーや形状のバリエーションも出していく予定です」

 PLAZAでは青山学院高等部の生徒と共同で企画した日傘が、6月から発売されるという。

「推し活をテーマにした晴雨兼用傘を販売します。多くのカラーバリエーションを取り揃え、メンバーカラーを選べるようになっています。また、アクリルポーチに収納でき、さらにフックでバックやリュックにかけることで手軽に出し入れが可能です。ポーチには、推しのシールやステッカーを入れたりもできます。高校生からは『推し活の現場では、長時間外にいることも多いがそこでテンションが上がるような日傘が少ない』という意見が出て、このようなアイテムを開発いたしました」

 PLAZAを筆頭に、日本では多くの日傘が売られている。それは、インバウンド客からも非常に人気が高い。

「特に韓国人観光客から人気です。カラーや柄のバリエーションもあって、かつ軽くて丈夫な日傘は日本だけなんだそうです。インバウンド効果も多少は関係していますが、今のところPLAZAの日傘の売上は、去年の2倍になるペースです。若年層の男性でも、すでに日傘を使うことは当たり前になっているので、今後そのような価値観が広まれば、さらに日傘需要は伸びると思います」

 男性がリップクリームを一般的につけ始めたのは1998年くらいで、定着するまで10年ほどかかっただろうか。それほどまでに、男性の美容意識の定着は遅いのだが、現在では情報の伝達スピードはかつてとは比べ物にならない。

 男性の日傘が定着する日は早々に来そうである。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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