低金利がウリの「ネット銀行」が“頭金”にこだわり始めた裏事情 「住宅ローン」利用者はそれでも低金利を追うべきか

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今後、最優遇金利の適用ハードルが上がっていく?

「例えばSBI新生銀行は自己資金比率10%で0.05%の引き下げ、PayPay銀行は同じく10%で0.065%の引き下げ、住信SBIネット銀行では自己資金比率20%を条件に0.032%の金利引き下げを設定しています。自己資金比率によって適用金利が変わる商品設計はフルローンで借りるのが一般的になったため下火となっていましたが、最近は増えてきている印象です」(塩澤氏)

 仮に1億円の“億ション”を購入する場合、自己資金比率10%なら1000万円、20%なら2000万円をローン契約時に頭金として用意できないと、「最優遇金利」での融資を受けられないので、なかなかのインパクトになりそうだ。一体なぜ、このような動きが広がっているのだろうか。

「大きくは2つあると思います。1つ目はマーケティングの強化です。金利競争は限界に近づいているため、差別化の手段として、自己資金の条件付きではあるものの他行よりも低い金利を提示し、大量集客したいという狙いです。ただし、審査申込後にユーザーが離脱するリスクは一定程度あるでしょう」(塩澤氏)

 実際には、自己資金を出さずに全額をローンでまかなう「フルローン」が一般的であるため、優遇金利を自己資金の条件付きにしている銀行では、審査承認後に提示される金利が表示金利よりも高くなるケースが想定される。それを見てがっかりしたユーザーがその銀行との契約を取りやめる可能性がある、ということだ。

「もう1つは銀行が抱えられるリスク総量の問題です。銀行業は貸し倒れリスクを抑えつつ、いかに多くのローンを貸し付けて儲けるかというゲームです。最近は低金利のため、金利収益ではなく融資手数料が儲けの源泉になっているとの話も聞きます。つまり、収益を上げるには新規の貸出しを毎年数多く実行し、融資手数料を積み上げる必要があります」(塩澤氏)

 融資手数料は元本の2%を取る銀行が多い。1億円のローンを組む場合は、金利の支払いとは別に200万円を支払うことになる。

「リスクを抑えつつ新規の貸出件数を伸ばす上で鍵となるのが、実は自己資金なのです。自己資金が多い住宅ローンは貸し倒れリスクが低い。ゆえに、銀行はリスク総量を抑えながらローンの新規貸出件数を増やすことができます。銀行が取れるリスク総量は国際的なルールで上限が決まっていますので、自己資金を入れてくれるユーザーは実は銀行にとってはありがたい存在でもあるのです」(塩澤氏)

 もともとネット銀行は条件面が優れる代わり、審査が厳しいことで知られ、一説によると本審査をクリアできるのは5~6割だと言われている。自己資金比率の引き上げは、貸し倒れのリスクをさらに圧縮したいという銀行の思惑があるのかも知れない。

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