「2029年までに内戦が起こりうる」41%…大統領選でトランプ氏が敗北なら、再び危機がやってくる

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高齢化と格差の問題は一層深刻に

「宵越しの金は持たない」とばかりにカネを使い続けてきた米国人だったが、懐事情が厳しくなる中、将来への不安が急速に広がっている感がある。

 投資・貯蓄アプリ大手エイコーンズが5月上旬に発表した調査によれば、Z世代の29%、ミレニアル世代の32%が「自分が将来ホームレスになってしまうのではないか心配だ」と回答している。ベビーブーム世代の回答割合(11%)の約3倍だ。米国の昨年1月時点のホームレスは前年比12%増の約65万人だ。若者の約4割は人工知能(AI)の台頭を不安材料に挙げている。

 ミドル世代は老後の資金不足を心配している。

 米生命保険大手ノースウェスタン・ミューチュアルが4月下旬に発表した調査結果によれば、X世代(43~58歳)の42%が「寿命よりも先に貯金が尽きる恐れがある」と回答した。世界最大の高齢者団体 AARPによれば、生涯にわたって働き続ける意向を示す米国人の割合は25%以上に上昇しているという。

 社会保障の資金不足を補うための富裕層への課税案を、米大統領選の激戦 7州では有権者の77%が支持していることも明らかになっている(4月24日付ブルームバーグ)。

 米国でも高齢化が進んでおり、格差の問題は今後一層深刻になるのは確実だ。進化人類学者のピーター・ターチン氏は「米国社会は長期の不安定期に入った」とかねてから指摘しているが、その理由として挙げているのは「1970年代以降、富が貧困層から富裕層に流れるようになった」ことだ(5月6日付クーリエ・ジャポン)。

「米国で新たな内戦が起こりうる」は41%

 11月の大統領選が政情不安の引き金となるとの警戒感も高まっている。

 ゴールドマンサックスは「大統領選の結果の確定が長引くリスクがある」と指摘(5月10日付ブルームバーグ)し、さらに、ロイターが実施した最新の世論調査では有権者の68%が「過激主義者たちが選挙結果に不満を持った場合、前回のように暴力に訴える」と回答している。

 トランプ前大統領の熱狂的な支持者は、社会の現状に大きな不満を募らせている。彼らはトランプ氏のことを「神に選ばれし者」とあがめており(5月8日付西日本新聞)、彼が再び敗戦の憂き目に遭えば、黙って引き下がるとは到底思えない。

 米世論調査企業ラスムッセンが4月下旬に実施した調査によれば、41%が「2029年までに米国で新たな内戦が起こりうる」と考えており、このうち16%は「非常にあり得る」と認識しているという。

 第2次南北戦争の勃発をテーマとした「CIVIL WAR(内戦)」が4月12日に米国で公開され、2週連続第1位のヒットを記録した(日本での公開は10月4日から)。

 黙示録的な映画が現実にならないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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