能登のシンボル「輪島朝市」で「義援金分裂」「訴訟合戦」の泥沼内紛が 一体何が起きているのか

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「訴訟を繰り返し、罵倒し合ってる」

 能登半島地震から5カ月が過ぎようとしている。徐々に被災地は復興への歩みを進めているが、立て直しが重要なのは生活インフラや建物だけではない。能登のシンボル「輪島朝市」では組合員が訴訟合戦、互いをののしり合う泥沼内紛の最中にあるというのだ。

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 随一の観光名所「輪島朝市」も揺れによって生じた火災で約300棟が焼損した。

 輪島朝市にはそこで露店や店舗を営む190名超のメンバーで構成される「輪島市朝市組合」があり、市から道路の占有許可を得ている。

 組合員一同、一体となって復活へまっしぐら、といきたいが店主の高齢化で店の再建がどこまで進むか。そもそもそこに至るまでの生活の糧をどう確保するか。難問は山積みなのだ。

 そして新聞やテレビが報じない、もうひとつの難題もある。

 朝市の関係者が声を潜めて言う。

「実は、朝市組合はここ数年、メンバー同士がもめ、片方の派が追い出されて同じ『輪島朝市』を冠するNPO法人を作っています。以来、多数派の『組合』と少数派の『NPO』が、お互いに訴訟を繰り返し、罵倒し合っている。震災後にそれはエスカレートし、輪島朝市を冠する震災の義援金の窓口が並立する状況なのです」

泥沼訴訟の発端は

 まずは、追い出された方の言い分を聞いてみよう。NPO法人「輪島朝市」のさる幹部はこう語る。

「彼らは規則に基づかず、組合員の声も聞かずに一部のメンバーの利害だけで動こうとし、都合の悪い者は排除している。こうした状況に疑問や不信感を持っている組合員は多いですよ」

 トラブルの発端は2019年。組合員以外の商店主が、東京や岐阜などの各地で「輪島朝市」を名乗って店を出したことが発覚したのだという。

 当時、このNPO幹部は組合の理事の一人であった。

「何かあったら組合は責任が持てないし、『輪島朝市』の名は地域の重要な資源ですから、きちんと管理していくべきだという声が強まりました。そこで、組合で『輪島朝市』を商標登録する話が出てきました。が、商標は法人格がないと申請できません。そのため、組合を主体として新たにNPO法人を作ることを検討しました」

 幹部氏と当時の組合長が中心になり、この案が理事会に提出された。しかし、

「25名の理事のうち2名反対者が出た。彼ら2名はその前から私たちに対して“組合の事業で利益誘導している”などと誹謗中傷し、その時も“NPO化で彼らにお金が入る仕組みになっている”などとビラを配ったりしたんです。後の総会でも同様の主張をし、法人化案は結局、保留に。あまりに混乱を招いたので、理事会で二人の除名が決まったのです」

 するとこの二人は、処分を不服とし、金沢地裁に地位確認の訴訟に打って出た。翌20年、一審判決で組合が敗訴すると、今度は逆襲が始まったという。

「二人は組合に戻った。そして敗訴した当時の執行部に代わって、二人と近い、新しい組合長が誕生し、その翌年、私と前組合長は理事を解任されることになったんです。でもその手続きには大きな問題があったので、私たちは解任の無効を求める裁判を起こした」

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