大谷翔平の“リアル二刀流”が実現! “歴史的な1球”を投じた試合も…無双モードだった忘れがたき「交流戦」を振り返る

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当時NPB最速の163キロをマーク

 開幕から無傷の6連勝で迎えた2015年の交流戦は、5月30日の中日戦で8回を3安打2失点に抑え、開幕7連勝。6月6日の阪神戦では、7番投手で出場し、プロ3年目にして同一試合での“リアル二刀流”が初めて実現したが、7回1失点の好投も0対1で惜敗し、シーズン初黒星を喫した。打撃もメッセンジャーの前に3打数3三振と不発に終わる。

 だが、6月14日のDeNA戦では、8回途中に右足首の違和感で緊急降板したものの、4安打8奪三振1失点で交流戦2勝目を挙げた。

 同年は好調の“投”とは裏腹に、“打”は打率1割台と不振が続き、栗山英樹監督からも「どうせ打たないじゃん」とジョーク交じりに冷やかされていたが、6月3日の広島戦で、2対0の7回1死二塁のチャンスに代打で登場すると、一、二塁間をゴロで抜くタイムリーを放ち、久々に“打の大谷”をアピールした。

 2016年、二刀流の本領を発揮して、日本ハムの10年ぶり日本一に貢献した大谷は、交流戦でも押しも押されぬヒーローになった。

 6月5日の巨人戦に5番投手で出場すると、4回1死満塁のクルーズの打席でNPB最速の163キロ(当時)をマークするなど、6安打10奪三振2失点で完投勝ち。打者としても6回に右前安打を放ち、3回無死満塁のチャンスでは犠飛で打点も挙げた。

“歴史的な1球”について、大谷は「失投ですね。真ん中なので」と反省の言葉を口にしたが、クルーズはバットにかすらせてファウルするのが精一杯。次の122キロカーブで三ゴロ併殺に打ち取っている。

「投手二冠」に輝く大活躍

 本拠地・札幌ドームで行われた6月12日の阪神戦では、交流戦史上初のDH放棄の5番投手で出場。「今日は最初から力を入れていこうと決めていた」の言葉どおり、自己最速の163キロを連発するなど、計42球が160キロ超えの剛腕ぶりを発揮。7回3安打8奪三振無失点で勝利投手になった。

 さらに交流戦最終登板となった6月19日の中日戦では、再びDH解除で出場し、8回を2安打12奪三振の無失点、打っても1安打1打点で、4打席中3度出塁。6回にレアードの左翼線への当たりで一塁から長駆生還するなど、投打走の“三刀流”でファンを魅了した。

 交流戦登板3試合で最多の3勝を挙げ、防御率もトップの0.38と投手二冠に輝いた大谷は、セ・リーグの“神ってる男”鈴木誠也(広島)とともに日本生命賞を贈られ、「素晴らしい選手が揃うパ・リーグで1人だけがいただけるこの賞を励みにして、今後のリーグ戦も頑張ります」と決意を新たにした。

 翌2017年の日本ハム最終年は、左大腿二頭筋の肉離れで1軍復帰が6月27日まで遅れたため、交流戦は出場なし。最も活躍した2016年が最終出場となった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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