森ビル14年目に突入する辻慎吾社長のワンマン体制 関係者は「社内は自由にモノが言える雰囲気ではない」

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パワハラとセクハラは「ございません」

 辻社長のパワハラとセクハラの問題では、実態把握と社内調査検討の有無、ハラスメントを訴える切実な声をどう受け止めるか質問すると、以下の回答があった。

《社長からパワハラやセクハラを受けている旨の当社への申し出はございません。パワハラとセクハラに関しましては、就業規則にて禁止および排除について定めること、管理職研修にて周知・啓蒙を実施すること、毎年のストレスチェックにて有無を確認すること、毎年の自己申告にて人事部への直送で申告できるようにすること、社内・社外の相談・通報窓口を設け、一定の場合は上司又は当該窓口への報告・通報をコンプライアンス規程において義務付けることなどにより、防止に努めています》

 最後に筆頭株主であり取締役の森佳子氏か、取締役副社長執行役員の森浩生氏の取材を依頼すると、以下のような回答だった。

《株主への取材申し入れにつきましては、本人から「森ビルの回答が全てであり、付け加えることはありま せん。」との回答がございました》(編集部註:回答文を受け取った後、電話で「株主とは森佳子氏のことを指すのか」と担当者に確認すると、「その通りだ」との回答だった)

社内調査を実施すべき

 前出の関係者は、辻社長の“長期ワンマン体制”に対する森ビル側の回答に納得がいかないという。

「再開発事業が長期にわたるのは事実ですが、だから社長を退くことができない、役員を固定化せざるを得ないというのは詭弁でしょう。プロジェクトは同時並行で進めていますから、1つのプロジェクトが完成しても他のプロジェクトは動いており、区切りを付けることはできません。そもそも企業が長期の研究や開発を行うのは当たり前のことで、トップが交代してもプロジェクトは進むのが普通です。森ビルの回答は『弊社はリーダーが育ちにくい会社です』と宣言しているようなものです。いや、ひょっとすると育たないようにしているのかもしれません。辻さんがご自身の立場を守るための回答だと受け止められても仕方ないと思います」

 さらにパワハラとセクハラの質問で「社内で被害の申し出がない」と回答したことも疑問視する。

「森ビルの回答を要約すると、『通報システムがあるから大丈夫です』という内容になるでしょう。これで問題ないとする企業姿勢に対して強い危機感を覚えます。社内でパワハラやセクハラの被害に悩んでいる社員はいますが、後難を恐れる彼らが通報システムを使えるはずがありません。上層部に堂々と意見具申できない社員の姿は、森ビルが『モノを言えない』企業風土に変貌してしまったことを象徴的に示しています。パワハラやセクハラの事実がないと言うのなら、それこそ堂々と社内調査を実施して証明すべきでしょう」(同・関係者)

 辻社長が森ビルのトップに就任したことを受け、時事通信は2011年3月に「魅力ある街づくりにまい進=森ビルの辻慎吾次期社長〔トップ登場〕」との記事を配信した。取材に応じた辻社長は海外展開などについて語った上で、次のように述べたという。

《偏見を持たず、人の意見に耳を傾けて新しい考えを受け入れる「オープンマインド」が信条》

 果たして辻社長が「オープンマインド」の持ち主だと認める社員の数は、どれくらいになるのだろうか──?

デイリー新潮編集部

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