森ビル14年目に突入する辻慎吾社長のワンマン体制 関係者は「社内は自由にモノが言える雰囲気ではない」

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社長の周囲はイエスマン

「役員クラスですら、辻社長に対する忖度が過剰です。何を言っても『社長に確認します』の繰り返しですから、なかなか話が進みません。それでも役員と調整を続けていると、結局は辻社長が話をひっくり返してしまいます。社員が疲弊しているのは分かりますが、外部の人間だって疲れ果てます。『辻社長が業績を上げたと言っても、森稔会長が敷いたレールの上を走っただけじゃないか』と痛烈な批判を口にする外部関係者もいるほどです」(同・関係者)

 確かに目先の業績は好調かもしれない。だが50年先、100年先の未来を考えると、「森ビルの明日を担う人材」が育っているのだろうか──こんな危機感を抱いている社員は少なくないという。

「森稔さんも辻さんのワンマン気質は知り抜いていたはずです。その上で、『自分は会長として辻の手綱はしっかり握る』と考えて社長に抜擢したのではないでしょうか。ところが森さんの急逝という予想もしなかった事態が発生し、辻さんのワンマン化が一気に加速しました。その弊害は役員人事を見れば一目瞭然です。2012年に16人だった取締役は8人に減り、最後に専任が行われたのは2014年。それから約10年の歳月が流れましたが、役員の顔ぶれは全く変わっていません。上層部の固定化、硬直化は、辻さんの周囲がイエスマンばかりという状況を浮き彫りにしていると言えます」(同・関係者)

動かない森佳子氏

 上場企業には経営トップのワンマン化を防ぐ様々な方策が用意されている。しかしながら森ビルは非上場企業だ。それには切実な理由があるという。

「大前提として、これまで森ビルは一度も上場を否定したことはありません。経営上必要だと判断すれば、いつでも上場するという姿勢です。とはいえ、森ビルは大規模な再開発が事業の根幹という特殊な事情があります。六本木ヒルズや麻布台ヒルズは数十年という長い年月をかけて計画を練ってきました。もし株式を上場し、機関投資家が経営に口を出せる状態になると、こうした経営戦略は認められないでしょう。今のところ、森ビルにとって上場で受けるメリットは少ないと言えます」(同・関係者)

 辻社長の年齢や在任期間の長期化などから、「麻布台ヒルズの開業を花道として社長を退くのではないか」という声が業界内から上がったこともあったという。しかし現実のものとはならなかった。

「森稔さんの妻である佳子さんが、森ビルの筆頭株主です。彼女は森ビルの取締役でもありますから、辻社長の問題行動は耳に入っているはずなのです。それでも佳子さんが事態の収拾に動く気配は感じられません」(同・関係者)

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