森ビル14年目に突入する辻慎吾社長のワンマン体制 関係者は「社内は自由にモノが言える雰囲気ではない」

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辻社長に対する疑問の声

 実は最近、辻社長に批判的な報道が相次いでいる。総合情報誌「FACTA」は昨年12月号に「膨張する借金『森ビル』の不安 有利子負債1・6兆円。フリーキャッシュフローは5期連続赤字。人望なき雇われ社長」との記事を掲載した。

 さらに月刊誌「文藝春秋」も同じく12月号の「丸の内コンフィエデンシャル」で「森ビルに暗雲」と報じたのだ。

「両誌が共通して指摘したのは、辻体制の行き詰まりです。FACTAの場合は森ビルで有利子負債が膨張していると指摘した上で、オフィス市況の悪化によりテナント誘致に苦戦。辻社長にはリーダーシップが欠如しており、社内でも不満の声が出ていると伝えました。文春のほうは虎ノ門ヒルズと麻布台ヒルズが完成したにもかかわらず、『次の一手』が見えないと不安視。今後も大規模再開発の展望が描けないのなら、辻社長の交代もあり得ると報じました」(前出の記者)

 森ビルの社内で、辻社長の“ワンマン・長期政権”を憂慮する声が出ているのは事実だという。

「両誌の報道は首肯できる記述もあれば、間違っている部分もあります。例えば文藝春秋は『森ビルは次の展望が見えない』と報じましたが、これは違います。例えば“第2六本木ヒルズ”と呼ばれる六本木5丁目地区の再開発では、3月に東京都の都市計画決定が出ました。この再開発では同時に、国の国家戦略特区の事業にも指定されています。森ビルとしてやらなければならないことは山のようにあるのです。しかし、その上で『果たして辻さんは社長の器なのか』という疑問の声が社内でも囁かれているのです」(前出の関係者)

パワハラ問題

 社長の辻慎吾氏は1960年生まれの63歳。横浜国立大学の大学院で建築と都市計画を学び、1985年に修了すると森ビルに入社した。

「辻さんの手腕は、役員になる前から社内でも評判でした。特に森稔さんが全精力を傾けていた六本木ヒルズの建設で、彼のビジョンを実際に形にした実績は傑出していますし、辻さんでなければできない仕事だったと掛け値なしに思います。ただし、社長になってからは弊害が目立つようになりました。例えば昔の森ビルは社長の森さんに何でも言える自由闊達な社風でした。多くの社員が森さんと議論する中、辻さんは特に森さんに食ってかかる“暴れん坊”だったのです。ところが、辻さんが社長になると、彼に意見具申をできる雰囲気ではなくなってしまったのです」(同・関係者)

 かつて“暴れん坊”だった辻氏は、森社長に堂々と意見具申するだけでなく、自分の意見が通るよう最初から修正案を用意していたという。普通の社員では、なかなかできない“芸当”だ。

「辻さんは自分でこうと思った主張は森稔さんに対しても一歩も引かなかったからこそ、稔さんに面白がられて評価を高めていったのでしょう。ところが辻さんが社長になるとそんな姿勢が悪いほうに働いてしまい、社員に反論されると『お前は黙ってろ!』と罵声を浴びせるようになってしまいました」(同・関係者)

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