森ビル14年目に突入する辻慎吾社長のワンマン体制 関係者は「社内は自由にモノが言える雰囲気ではない」

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 森ビルは3月25日、「役員人事のお知らせ」を発表した。新社長や新会長の就任は記されておらず、これで辻慎吾社長の“続投”が明らかになった。辻氏が社長に就任したのは2011年6月、つまり“辻体制”は今年6月で14年目に突入することになる。

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 読売新聞オンラインが2023年4月19日に配信した「上場企業の約半数は『同族経営』、世界が注目する理由とは」との記事によると、一般企業で社長の在任期間は平均で4・93年なのに対し、ファミリー企業は10・50年と倍になるのだそうだ。担当記者が言う。

「辻さんは社長になって今年6月で丸13年となったわけですから、一般企業どころか、ファミリー企業における社長の平均在任期間も超えてしまいました。非上場企業は社長の在任期間が長い傾向があり、森ビルも非上場です。とはいえ長期政権の社長はオーナー社長というケースが多いでしょう。辻さんは森ビルの社主ではありませんから、余計に珍しいケースだと言えます。業界の間では『あれじゃ森ビルじゃなくて辻ビルだ』という声も出ているほどです」

 森ビルの創業は1959年。初代社長は森泰吉郎氏で、生家は現在の港区で米穀店と貸家業を営んでいた。当時の東京商科大学(現・一橋大学)を卒業し、アカデミズムの世界に進んで横浜市立大学の教授に就任した。

 その一方で、家業を元に不動産業や貸しビル業に進出した。しかし50年代、「大学教授と会社経営の兼務は地方公務員法の兼業禁止規定に抵触する」と横浜市立大学内で問題視され、1959年に大学を辞職した。

「レジデンスB」問題

「父の森泰吉郎さんが作った森ビルを、世界でもトップクラスのデベロッパーに躍進させたのが次男の森稔さんでした。東大を卒業すると、取締役として森ビルに入社。積極的な事業拡大策を執り、地権者との交渉では自ら陣頭に立ったことでも知られています。アークヒルズと六本木ヒルズを完成させ、森ビルの知名度を全国的なレベルに高めました」(前出の記者)

 森稔氏の社長就任は1993年。そして2011年に会長に退くと、後継者として辻氏を社長に指名し、大きな話題を呼んだ。

「森稔さんには二人のお嬢さんがいて、長女は日本興業銀行(現・みずほ銀行)に務めていた高草浩生さんと結婚。この高草浩生さんが森浩生さんとなり、1997年に森ビルの取締役に就任しました。さらに2003年には専務取締役と出世を果たし、後継は確実と目されていたのです。ところが森稔さんは次期社長に辻さんを指名すると、翌2012年に心不全で急逝してしまいました」(同・記者)

 前編の「麻布台ヒルズ タワマン『レジデンスB』の完成が遅れている…森ビル社長の謝罪は紙1枚に疑問の声」では、昨年11月に開業した麻布台ヒルズで、完成が遅れている巨大物件が社会問題を引きおこしていることを伝えた。何しろ依然として開業できてないのはオフィスのテナントとか商業施設ではない。レジデンスBという高さ約270メートルの超高層ビルが今も建設中なのだ。

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