麻布台ヒルズ タワマン「レジデンスB」の完成が遅れている…森ビル社長の謝罪は紙1枚に疑問の声

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公表されていない「再延期」

 さらに23年になると、コンクリート部材の一部に不具合が認められたり、その不具合に不適切な補修が行われたりしたことが発覚した。

 三井住友建設は昨年5月、地権者を中心とする再開発組合に対し、工事の進捗状況を報告した。その際に配られた資料文書をデイリー新潮は入手したが、そこには24年6月に延期された開発予定が、《25年8月末になる見込みでございます》と再延期されることが明記されていた。

 しかし、この再延期の事実を三井住友建設は森ビルと再開発組合にしか明らかにしておらず、プレスリリースなどは今のところ発表されていない。

「とはいえ“隠蔽”という表現も当てはまりません。三井住友建設がひたすら物件名を伏せても、業界関係者にはバレバレという形で事態は推移してきました。特に同社は22年3月期に219億円、23年3月期に315億円、合計534億円の損失を計上し、2年連続の赤字決算を発表しましたから、当然ながらマスコミや株主は強く反応しました。昨年6月に経済誌のダイヤモンド・オンライン、12月に日経アーキテクチュアが『レジデンスBの建設の遅れが赤字決算の原因』と報道。そして産経新聞が今年2月に『三井住友建設に社長解任の動き』との記事を掲載したのです」(同・記者)

紙一枚で終わった謝罪

 三井住友建設は2月28日、柴田敏雄専務執行役員が4月1日付で社長に昇格する人事を発表。メインバンクである三井住友銀行出身の近藤重敏社長と君島章児会長は退任となった。レジデンスBの工事が遅れ、2年連続の最終赤字に陥った経営責任を近藤氏と君島氏が取る形になったわけだ。

 この件で、森ビルはあくまでも“被害者”の立場だ。とはいえ、レジデンスBに入居予定の地権者は少なくない。彼らに対する責任を同社が負っているのは言うまでもないだろう。

 デイリー新潮は森ビルが作成した社外文書のコピーを入手した。文書は5月27日付で、発信者として辻慎吾社長の名前が明記。再開発組合に対して工事の遅延を謝罪する内容となっている。

 組合に対する説明会が開催され、三井住友建設が工事遅延の原因などを説明。その後、出席していた森ビルの開発責任役員が文書を配付し、読み上げたという。

 こうして経緯を振り返ると、森ビルが組合に対し誠実に対応しているように思える。ところが、辻社長の名前で出された謝罪文書は、何とA4の紙1枚だけなのだ。組合の関係者は「率直に言って、紙1枚の謝罪で済むのかという疑問は拭えません」と言う。

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