上岡龍太郎さんが語っていた「M-1に出たら予選落ちするわ」 引退後の生活についてサンミュージック社長が明かす

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「ゴルフが本当に上手で、周りが邪魔しても…」

 それで「来月、(ゴルフの)コンペがあるから一緒にやりましょ」と誘われたわけだが、ゴルフ場ではその“芸”に驚くことに。

「ゴルフが本当にお上手だったので、まわりがなんとかして邪魔しようと、上岡さんがスイングする直前に“7番ホールでんな。百人一首七番といえば?”とお題を出すんです。すると上岡さんは“天の原/ふりさけ見れば/春日なる~”とソラで七番を正しく詠んで、それから“安倍仲麿”って詠み人まで答えてスパーンと見事に打つんです」

 みな目を丸くしたという。

「他にも例えば14番ホールで“第14代米大統領は?”って聞くでしょ。これにも即座に“フランクリン・ピアース”ですよ。いろんなパターンがありました」

 上岡さんは博識なことでも知られていたが、まさしくその片鱗見たりである。

 岡社長はラウンドしながらあることに気が付いた。

「テレビに出ていた頃と比べると、話し方がとてもソフトで優しかったんです」

 上岡さんといえば、触れるとケガをしそうな、まるでマシンガンを連射するような“強い喋り”が特徴だった。

「だから言ったんですよ。“師匠、テレビの時と違って喋りが柔らかいですね”って。上岡さんは“テレビの時はテレビなりの『上岡龍太郎とはこうや』という張り方があったんや。中身は変わらへんよ”とおっしゃいました。話術はまったくさびついてなどいないし、プレーの合間のお話もずっと面白い。それはもう、楽しいゴルフでした」

M-1について「僕が出たら予選落ちするわ」

 最近の芸人について語ったこともあったという。

「“師匠、(日本一の若手漫才師を決める)M-1とかどう思いますか?”と聞いてみたんですよ。そしたら“今の芸人はほんまにうまい。僕が出ても絶対に勝てへんやろな。予選落ちするわ”と真面目な顔でおっしゃってました。さらに“今の子たちは全体的なレベルが昔とはまるで違う。芸人稼業も大変やと思うわ”とも。心からそう思っておられる感じでした」

 講談師としての顔もあり、「旭堂南蛇(なんじゃ)」の芸名も持っていた上岡さんに対して、酒席をともにする連中が無理な注文を出す、つまり“無茶ブリ”することもあった。

「講談のあの話をやってほしい、と誰かが言えば、上岡さんは“あれはこれこれこういう話で……”と軽く解説され、すぐその講談をやるんですね。引退されて何年もたってましたが、それは見事なものでした」

 20世紀も終わろうとするあの時代、上岡さんの話芸はテレビ業界で並ぶ者とてない水準にあった。その才は晩年まで衰えることがなかったようだ。

ライター・華川富士也

週刊新潮 2024年5月23日号掲載

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