年商4000万円のキクラゲ農家になった元ソフトバンク・中原大樹さんが語る、同年入団の柳田悠岐への感謝

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またとないチャンスが到来

 キクラゲといえば中華料理などでよく使われるが、96%ほどは海外産で、なかでも中国産が多いという。以前は輸入した方が安かったが、次第に値上がりし、輸入量も減少。減った分は国産にシフトチェンジして賄われるだろうといわれていた。

 またとないチャンスだと映った。

「無農薬で作れば、安全を求める人は少々高くても買ってくれるのではないかと思ったんです。しかも栄養価が高いのに感動して」

 聞けば、骨を丈夫にするビタミンDやカルシウム、鉄分が豊富で、腸活に効く食物繊維も多い。ケガに悩んだ選手時代を振り返っても、健康にいい食べ物に携わるのはしっくりきたし、体を使うのも性に合った。

 20年、岳父が設立した株式会社Laize(ライズ)を、常務取締役として支えることになった。

 手始めに兵庫県のキクラゲ農家で研修を受け、自宅で栽培してみた。中原さんの栽培方法は、キクラゲの菌床を育てるブロックを使う。おがくずや米ぬかなどの栄養分を加えて固めたブロックをビニールハウスなどに置き、菌が生育しやすい室温20度、湿度90%を保つ。こまめな水やりが必須だ。

 いざ栽培してみると、思いのほかうまく育てられた。

“珍しい作物の事例がないので融資できない”

 これならできそうだと安心したのも束の間、大変なのはそれからだった。

 福岡県の糸島市は多種の農産物に恵まれ“糸島ブランド”が全国的に認知されていた。だから糸島市で栽培したかったのだが、地権者のつてはなし。4か月間糸島全域を走り回ってようやく1000坪の農地を見つけた。

 さらに厳しかったのは、融資が受けられなかったことである。

「銀行の担当者から“キクラゲのような珍しい作物の事例がないので融資できない。まずは実績づくりをしてほしい”と言われまして。“エッ?”ですよ。家族が貯金を出し合って2000万円ほど集めました」

 いざハウスに電気を引こうとしたら200万円近くかかるというし、水道を引くにもお金がかかる。

 しばらくは仕方なく発電機を使い、水は毎日自宅の井戸水をくみ上げては車に載せ、片道15分の道路を1日3往復して1000リットルを用意した。

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