「虎に翼」まさかの衝撃展開…胸を突かれた優三の言葉を振り返る「ありがとうね、トラちゃん」
家族を欲していた優三
書生としての優三と10年以上にわたって一緒に暮らした寅子と猪爪家の家族は鈍感になっていたが、彼が寅子と結ばれたかった理由は痛いほど分かった。寅子と猪爪家が好きだったうえ、天涯孤独だったからだ。
寅子の母親・はる(石田ゆり子)から、結婚で得られる優三側の旨味を問われると、こう声を強めた。
「僕の家族は他界しています。僕には家族がおりません。トラちゃんと猪爪家と家族になれる。それが僕にとっての旨味です」(第35回)
一度は「社会的地位を手に入れるために結婚したい」と言ったものの、それは寅子の考えに合わせただけ。誰でもいいから結婚したいと考えていた寅子に向かって、「僕じゃダメ?」と尋ね、了解が得られると、「良かったー!」と歓喜した。このときの優三の表情に寅子が気づこうとしなかっただけである(第34回)。
直言とはるから寅子との結婚の承諾を得られた際には、「ありがとうございます!」と声を張り上げ、頭を深々と下げた。あまりに喜び、座卓に頭をぶつけた(第35回)。
もっとも、優三が座卓に頭を打ち付けたのは通算4度目。1度目は「猪爪家の書生になるときの挨拶時(回想)」(第2回)、2度目は「1937年、寅子が初めての高等試験で不合格。優三も落ち、直言とはるへの謝罪時」(第26回)、3度目は「高等試験の口述試験に落ち、猪爪家を出ることに。長年、世話になったお礼を言った時」(第31回)。結婚の許しが得られたときは、優三の目の前にあった茶碗を寅子が事前にどかした。もはや猪爪家の名物だった。
優三は結婚後の第1夜で「僕はずっと好きだったんだけどね、トラちゃんが」(第35回)と打ち明ける。寅子は驚いたが、観ている側の大半はそれを物語の前半から感じていたのではないか。寅子も優三に肉親愛めいたものを抱いていたはずだ。
好きだから優三はいつも寅子を庇った。明律大法学部の夜学に通う自分に弁当を持って来てくれた寅子が、「婚姻状態の女性は無能力者」と講義する裁判官の桂場等一郎(松山ケンイチ)に反論すると、「申し訳ありません!」と頭を下げた(第2回)。
明律大女子部による法廷劇にヤジを飛ばした男子学生を寅子が引っ掻こうとすると、割って入り、寅子が学生を傷つけてしまうことを防いだ。代わりに自分が傷を負った。優三らしかった(第13回)。
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