知床観光船事故、ビッグモーター不正…問題企業の“指南役”で注目されたコンサルタントの意外な近況

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 北海道・知床半島を巡る観光船「KAZU I」(カズワン)が沈没したことによって乗客ら26人が死亡・行方不明となった事故から2年が経過した。当時、経営の多角化や経費削減などをアドバイスしたとして、「黒幕ではないか」との疑惑を持たれていた“あのコンサルタント”は、すっかりほとぼりも冷めたのか、会社の事業は好調のようだ。

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桂田社長が心酔

 2年前に事故を起こした当事者となったのは、有限会社知床遊覧船。国の運輸安全委員会による最終報告書では、船のハッチの不具合などが直接的な原因とされつつ、天候不順の中で出航した背景として、社の安全管理体制の不備などが指摘されている。事故後の対応などに大きな批判が集まった桂田精一社長の責任が重いのは当然だろう。

 一方、当初より桂田社長と共に注目を集めていた人物がいた。株式会社武蔵野の代表取締役で、経営コンサルタントの小山昇氏である。

「桂田社長は小山さんに心酔していて、言いなりに近い状態でした。会社の経営には、小山さんが大きく影響していると思います」

 そう話すのは、知床遊覧船のさる関係者。実際にそれを裏付けるかのように、小山氏自身が著書『数字は人格』(2017年)で、桂田社長との関係についてこう綴っている。

〈桂田精一社長は有名百貨店で個展を行うほどの元陶芸家で、突然ホテル経営を任され、右も左もわからないド素人。運よく何もわからないから、小山にアドバイスされたことは「はい」「YES」「喜んで」ですぐ実行した〉

〈知床観光船が売り出されたとき、私は「値切ってはダメ! 言い値で買いなさい」と指導した。世界遺産のなかにあるホテルが売り出されたときも、「買いなさい。自然に溶け込む外壁にしなさい」と指示した。すると、赤字の会社があっというまに黒字に変わった〉

 小山氏の指導を従順に実行し、“経営多角化路線”が展開されていたことが明かされているのである。後に、この多角化が原因で事業は赤字に転落。ベテラン船長たちも解雇されたことで、知見に乏しいスタッフが運航業務を行うようになったと指摘された。

1年半で5冊

 そんな小山氏の本業は、好調であるようだ。(株)武蔵野の採用情報が記されたサイトを見る限り、右肩上がりの経営が続き、10年前は45億円程度だった売上高は、「2023年4月実績」では75億円にまで到達。さらに、小山氏の名義での書籍も、この1年半ほどで5冊も出版されている。

・『会社を絶対潰さない組織の強化書』(2023/1/20)
・『データを使って利益を最大化する 超効率経営』(2023/3/14)
・『「儲かる会社」の心理的安全性』(2023/7/4)
・『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』(2023/12/22)
・『儲かる社長の超・決断力』(2024/3/4)

 7月には『成長する会社の朝礼~組織が変わる212の言葉』なる書籍も、上下巻に分けて発売が予定されている。コンサルタントとして、また社長として忙しく働く傍らこれだけの本を出版するとは、驚くばかりである。先の関係者曰く、

「とにかく小山さんの名前で本を出すと、多くの門下生や関係者たちが購入するので、頻繁に『ベストセラー』として扱われるようになる。そうやって自身に箔がつくことで、さらなるコンサル生獲得につながっているようです。実際に、桂田社長も小山氏の本を何十冊も持っていましたよ」

次ページ:小山氏に見解を問うてみたが……

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