なぜ「超人気アニメ」のグッズは1年後に「投げ売り状態」になるのか? “大人向け作品”の量産が招くアニメ業界の危機

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転売屋も見向きもしなくなる

 人気があるうちはグッズが少ないため、ファンのニーズが高く、転売屋まで出現するアニメもある。ネットでは「転売屋許すまじ!」という論調で批判が巻き起こり、ファンからも「本当のファンが買えないのは問題です」との声が上がって、対応が不十分な企業側がバッシングにさらされることもある。

 しかし、半年もすれば、嵐のようなブームが過ぎ去って転売屋すら見向きもしなくなる。この頃には、転売屋を叩いていた人々の関心は、既に他のアニメに移っている。すると、人気を見越して作りすぎた商品が余り、ディスカウントストアに流れてしまう……という構造なのだろう。熱心なファンには反論されるかもしれないが、少なくとも大半のファンは飽きるものなのだ。

 筆者はネットニュースを執筆し、時には編集も手掛けているので実感するのだが、放送中に一気にSNSで火が付いたアニメは、直後はどんなに“中身のないニュース”を書いてもアクセス数がトップになるほど読まれる。それだけ関心が高いというわけで、その兆候はアニメ終了後も2~3ヶ月は続く。

 しかし、である。半年後にはほとんど読まれなくなり、アクセス数が全盛期の10分の1に落ち込むタイトルも少なくない。そのかわり、別のアニメの話題が台頭し、そちらのニュースがアクセス数を稼ぐようになる。それほど、人々は他のものに関心が移るのが早いのだ。シンプルに言えば、飽きやすいのである。SNSが爆発的に普及したいま、そうした“熱しやすく冷めやすい”傾向は加速しているように思う。

アニメの製作本数が多すぎる

 かつて、アニメといえば、ゴールデンタイムに家族で視聴する文化があった。「ドラゴンボール」』や「ドラえもん」のように人気があれば放送は続き、100話を超える作品も珍しくなかった。ところが、2000年以降、深夜アニメが台頭してくると、12~13話程度で一区切りを迎えるアニメが増加した。

 こうしたアニメは、話題になると一時的にバッと人気が出る。しかし、短期間で放送が終わってしまうため、じっくりとファンを育てることができない。そのため、人気が落ちるのも早いのだ。アニメが放送されない間が空くため、企業側もグッズを長いスパンで売る戦略が立てられなくなった。人気があるうちに売り切らなければ、在庫を抱えてしまうリスクもある。

 ファンが飽きやすくなった要因のひとつに、SNSの普及のほかに、アニメの制作本数が多すぎることも挙げられる。日本動画協会の「『アニメ制作市場』動向調査2023」によれば、2021年に制作されたテレビアニメは310本にも及ぶという。2000年の109本と比べると、実に3倍近い数字だ。アニメーターの人員不足が叫ばれているにもかかわらず、アニメを作りすぎなのである。

 ベテランのアニメファンは、「2000年くらいまでなら、放映されるアニメのほとんどを視聴している熱心なファンもいました。しかし、今やこの物量では、10倍速で見てもすべてを視聴するのはどう考えても不可能。次から次へとアニメが製作されるため、流行を追いかけるのも大変です」と嘆く。

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