スイスに50億円余、ラスベガスで超VIP待遇 「五菱会系ヤミ金」元メンバー逮捕で振り返る「帝王と呼ばれた男」

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渡辺芳則組長が名づけ親

 そもそも五菱会の名称は、5代目山口組と山口組の代紋から取って、渡辺芳則5代目組長が名づけたとされる。

「当代が組織の名づけ親となったのは、とりも直さずヤミ金での収益を総本部に上納し続けてきたことを大きく評価してのことでしょう」(同)

 もっとも、この頃はすでに渡辺5代目時代の最晩年で、2年後には長期静養に入ることになる。一方、組織から偽装脱退したKはヤミ金の手法をシステマティックに洗練させていった。傘下に作った約30のグループそれぞれが、主として多重債務者からなる顧客名簿情報(通称・センター)を管理していた。

「違法な金利による貸付に対し、逃げたり警察や弁護士に相談したりするケースも当然あるわけですが、そういった情報もセンターは細かく把握・分析・管理していました。今でこそ広まったノウハウですが、当時そこまでできていたのは一般企業でもそうはなかったのではと思います」(同)

懲役6年6月、追徴金50億円余

 全盛期のKの活動は活発かつワールドワイドなものだった。たとえば彼はクレディ・スイスの日本人行員を取り込み、ヤミ金でのシノギの多くをマネーロンダリングのために本店に送金している。その額は当時のレートで50億円を超えており、さらにペーパーカンパニーを使ってこれらの金を日本に還流しようと計画していたという。が、Kのスイス国内の口座が凍結されたため、これは頓挫することとなった。

「うなるほどの金を持っていたKは、ラスベガスのカジノでも超VIP扱いでした」(同)

 そんな栄華がいつまでも続くはずがなく、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)などの罪に問われた結果、2005年12月、懲役6年6月、スイスに送金していた額とほぼ同額を罰金・追徴金とされる判決が確定した。

 今回逮捕された主犯の男の供述には、Kの管理していた「センター」に関する言及もあるようだ。2003年の五菱会解散後、18年に再びヤミ金を始める際、センターから顧客名簿の提供を受け、事務所の建物も紹介されたという。「帝王」に憧れ、ノウハウその他を継承したというわけだ。

 中小企業の多くが事業継承に悩みを抱えているとされる時代だが、言うまでもなく、こんな継承を認めるわけにはいかないのである。

デイリー新潮編集部

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