スイスに50億円余、ラスベガスで超VIP待遇 「五菱会系ヤミ金」元メンバー逮捕で振り返る「帝王と呼ばれた男」
5代目山口組傘下の五菱会系が手がけた
5月、東京都内のヤミ金業者が逮捕された。注目されるのは、その前歴である。2000年代、社会問題となった暴力団・五菱会(5代目山口組2次団体)が関係した大規模なヤミ金事件の“残党”が含まれていたのだ。当時、事件の首謀者だったKは、ヤミ金の帝王とまで呼ばれた人物。今回の逮捕者は、彼の手法を大いに参考にしていたと見られる。全盛期のKはマネーロンダリングのためにクレディ・スイス本店に50億円超を送金し、ラスベガスのカジノではスーパーVIP待遇を受けていた。いまだフォロワーを生む「帝王」の手口はどこが画期的だったのか。振り返ってみよう。
【独占入手】ニンマリとした表情が印象的な司組長。2024年1月25日の誕生日会でナンバー2、3ら執行部の面々と共に
「5月22日までに、違法に高い金利で現金を貸し付けたなどとして、東京都内のヤミ金業者ら4人が出資法違反などの疑いで逮捕されました。直近6年のあいだに1万5000人に対して5億円を貸し付け、約6億円の違法な利息を受け取っていたとみられています 」
と、担当記者。
「主たる容疑者は5代目山口組傘下の五菱会系が手がけるヤミ金グループで従業員だった男で、当時と似た組織を作って活動していたようです」(同)
ヤミ金の帝王の誕生
この男は、警察の調べに対し「羽振りがよかった当時の生活に戻りたかった」などと話しているという。
その「当時」の状況を振り返ってみよう。
1992年に施行された暴力団対策法を受け、暴力団は生き残るために収入源の改変を余儀なくされていた。飲食店からのみかじめ料の徴収から産廃処理や不動産業などをフロント企業に担わせるなどするシノギに注目が集まったが、景気低迷が続く中でヤミ金に走る組織が増える。不景気だと貸し渋りを受ける者も多く、そのぶん儲かるというわけだ。
ここで“業界”をリードする存在として台頭したのが五菱会と関係の深いKだった。後にヤミ金の帝王と呼ばれることになる。
Kは元々5代目山口組の3次団体・陣内組の副組長だった。2002年10月に2次団体・美尾組の組長が引退し、若頭で陣内組の組長が組織を引き継ぐ。その際に陣内組は五菱会となって2次団体に昇格している。
「Kは組織が五菱会へと改称・昇格した時期に組織名簿から名前が消えたと言われています。といっても、陣内組時代からシノギとしてきたヤミ金にさらに注力し、摘発を回避するための偽装脱退説が濃厚です」
と、当時を知る記者。
[1/2ページ]