妹は亡き夫とずっと関係を持っていた…それでも彼女を憎めない、と言う55歳未亡人が明かす「特殊な姉妹関係」
3年間の断絶
妹を憎みたい、憎めれば楽なのに。真知さんは身をよじるようにそう言った。だが憎めない。あのお祭りの日のような思いを何度もしているから。妹をかわいい、大事だと思っているから。
「謝るくらいならこんなことはしないと妹が最初に言ったとおり、彼女はまったく謝りませんでした。自分たちの関係を知ってほしいとも思っていない、と。だけどなぜか言ってしまった。それについては申し訳ないと妹は言いました。何か証拠はないのと私は聞きました。孝紀と妹の関係を示す証拠をちゃんと目にしたかった。すると妹は、見てどうするのと言いました」
妹は静かに去って行った。いつものように「またね」とは言わなかった。あれから3年、妹からは一度も連絡がない。真知さんも連絡していない。娘たちはおかしいと思っているはずだが、何も聞いてこない。娘たちが遼子さんと連絡をとりあっているかどうか、真知さんは知らない。
「一時、最近、遼子ちゃん来ないねと言われたことはあります。私の雰囲気から、もう二度と言ってはいけないと察したんじゃないでしょうか。ただ、妹が登録しているSNSはたまに更新されています。だから私も更新する。彼女もおそらく見ていると思います」
この3年間、時間さえあれば夫の写真に語りかけた。まったく気づかなかったよ、うまく騙してくれたね、と。騙したわけじゃない、オレも苦しかったと写真の夫は顔をしかめる。どうして苦しかったの、遼子を愛したから? 違う、きみのことが大好きだったから。夫がそんなふうに答えるところが目に浮かぶと真知さんは言った。
「許すとか許さないの問題ではない…」
一方で、自分が遼子さんと再会する場面は想像できずにいる。会いたいかと聞かれたら顔を背けたくなる。だが、すでに鬼籍に入った両親はどう思っているだろう。仲良くしてね、という母の声が聞こえるようだ。
「考えに考え、悩みに悩み、本当に苦しい3年間でした。でもいつかは連絡をとらなくてはいけないだろうな、そうするときが来るんだろうなと今は思っています。どうがんばっても夫は戻ってこない。いないままの人なんです。だから生きている私たちが、また姉妹として会うのは当然のなりゆきなのではないか、と。許すとか許さないの問題ではないと思う。それでも妹に連絡をとる勇気は出てこないんですけどね……」
いつか自然な形で妹に会う日が来るかもしれない。親の法事とか親戚の集まりとか。だが真知さんは「うちは法事も何もやってないんです。両親が、そういうことはいっさいしなくていいという人だったから」とうつむいた。永代供養の霊園に両親はふたりきりで眠っている。
「墓参りなんかしなくていいという親だったんですよ。しかも妹に会いたくなくて、このところはまったく行ってなくて。でも今年の秋、父の命日には行ってみようかなと思っています。妹も来るかもしれませんね」
きょうだいは他人の始まり。断絶する兄弟姉妹も多いが、真知さん姉妹の糸を切るかどうかは彼女自身にかかっているのかもしれない。
前編【夫の死後に発覚した“20年不倫”の相手にがく然…「胸が痛んで息ができなくなりそう」 55歳未亡人の苦悩】からのつづき
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