やっぱりウェブは「バカと暇人のもの」だった…日本一多忙なネット編集者が15年前に“本質”を見抜けたのはなぜか
インターネットがあろうがあるまいが
その一方で、当時とはレベルの違う「炎上」騒動が起き、ネットゲームへの課金で身を持ち崩す人々が続出する事態にもなっている。それが『ウェブはバカと暇人のもの』で訴えたかったことだ。本稿では、15年前のウェブの世界観を振り返りつつ、これからウェブがどのようになるかについて考察してみる。
私が『ウェブはバカと暇人のもの』を出した時の状況を振り返ると、「完全黙殺された」という状況だった。というのも、当時「インターネットがあれば集合知が集まり、補完し合い、修正して人間はより高みに行ける」というポジティブな「ウェブ2.0」の概念が支配的だったのだ。これに私は真っ向から反論し、この牧歌的な論調を「ネットユートピア論」と呼び、「ギーク」と呼ばれた先端的ITオタクやIT業界人の夢を煽る論調に冷や水を浴びせた。
多くの人は私が述べた「インターネットがあろうがあるまいが優秀な人は優秀なまま。バカはバカのまま。ツールがあなたの能力を高めることに期待しなさんな。あなたはあなた自身の能力を鍛え、ネットを便利に使いなさい」という意見を黙殺。
インフラの一つに過ぎない
「まぁ~そんなことを言う人もいますが、インターネットはあなたの人生を変えます! 素晴らしいです!」といったことをひたすら彼らは言い続け、私の存在を「なかったこと」にする時代が2009年のネット界隈の風景だった。もちろん、YouTuberとして大活躍したり、ネットで書いた文章が評価されて作家デビューをした人などもいたが、これは極めてレアケース。ほとんどの一般人は参入障壁の低いネットの世界の過当競争に疲れ、マネタイズはできていない状況が続いている。
ギーク達は、「次はこのツールが来る!」と散々期待を煽ったが、毎度毎度アーリーアダプターのみがおいしい果実を得られるだけだった。グーグルプラスで日本一のフォロワーを誇った女子大生は当時でこそ広告やらイベント出演のおいしい果実を得たが、グーグルプラスの衰退とともに彼女も存在感を減らした。YouTuberが多数所属する会社もクリエーターの離脱が相次ぎ、減収減益状態に。
結局「インターネット」という夢を今の40代以上の層は抱いたわけだが、それよりも若い世代からすれば、水道ガス電気電話と同じように「インフラ」の一つに過ぎない。なんでインフラに夢を抱くんだ? といった感覚を抱くことであろう。
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